失語症の看護計画では、言葉を理解する・話す・読む・書く力を別々に確かめ、本人の考えや苦痛が伝わる方法を整えます。話せないことを知能低下や意思の欠如と同一視せず、使える力を生かして説明と選択に参加できるよう支援します。
ここでは主に脳卒中後の成人入院患者を想定した学習用の計画例を示します。発症直後や新たな悪化では緊急評価を優先し、進行性疾患、小児、多言語での評価等は専門職と対象に合う方法を確認します。発音の不明瞭さを主とする構音障害や嚥下障害とは別に評価します
看護計画名:脳の言語機能の障害に伴う意思伝達の困難と、説明・選択への参加の制約
以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。
看護目標
短期目標
・次のケア時までに、言葉・指差し・表情等から自分に合う方法を支援者と試すことができる
・当日中に、痛み・排泄・休みたい等の必要を、支援を受けて伝えることができる
・次の説明時に、短い言葉や実物等の支援を受け、分かった点・分からない点を示すことができる
・翌日までに、疲労に合わせた時間と環境で、自分が希望する話題のやり取りに参加できる
長期目標
・転棟・退院時までに、本人に合う手段と必要な援助を用いて、日常の希望や苦痛を伝えることができる
・療養先へ移る時までに、利用できる情報提示と意思確認の支援を受け、生活やケアの選択に参加できる
・退院時までに、必要な支援を受け、使いやすい意思伝達手段と相談先を確認できる
・退院時までに、本人が望む会話や社会参加に向け、言語聴覚療法・地域支援の利用を相談できる
看護計画
O-P:観察・評価項目
・発症前の使用言語、読み書き、会話方法、仕事や生活で重視していたこと
・意識・注意・視聴覚・疲労・痛み等と、言葉の変化の開始時刻・普段との差
・短い言葉、実物、絵、身振り等による理解の違いと、複数の指示での反応
・単語・文での表出、言葉の出にくさ、言い間違いと本人の気付き
・読む力と書く力、文字・数字・絵を用いた意思伝達の実用性
・はい・いいえ、頷き・指差しの一貫性と、質問方法による違い
・麻痺や半側空間無視等が道具・ナースコール操作へ与える影響
・痛み・排泄等の必要が伝わらなかった場面と、その際の表情・行動
・会話時の不安、落ち込み、苛立ち、孤立感と本人が望む支援
・言語聴覚士の評価、役立った提示方法、補助具と必要な介助
T-P:ケア・実施項目
・新たな言語の悪化や意識・麻痺等の変化は、記録の完成を待たず医師・急変対応へつなげる
・本人へ向き合い、成人として尊重する自然な声で、一つの内容を短く伝える
・返答の時間を確保し、言葉を先回りして埋める前に本人の希望を確認する
・会話中のテレビ・周囲の会話等を減らし、覚醒と疲労に合う時間を選ぶ
・言語聴覚士と、実物・絵・文字・身振り・機器から使える手段を選ぶ
・はい・いいえが安定しない場合は、実物選択や別の提示で内容を確かめる
・苦痛・排泄・呼び出し等を優先した伝達手段を整え、実際の場面で使えるか試す
・重要な説明と同意では、提示方法と意思確認をチームで調整し、家族の返答だけで代替しない
・訓練と日常会話を区別し、食事・清潔等の本人に意味のある場面でもやり取りを支える
・使えた質問・道具の位置・疲労時の対応を記録し、担当者間で共有する
E-P:教育・生活支援
・失語症は言語の障害であり、話せないことだけで考えや意思がないと判断しないと説明する
・本人に合う呼び出し方法と、苦痛・排泄等を伝える手段を実物で確認する
・短い説明、返答を待つ、絵や身振りを加える方法を家族等と練習する
・読めると決めつけず、予定表・薬の説明・案内の提示方法を個別に確認する
・誤りの訂正や発語の強要を続けず、本人が伝えたい意味を確かめる関わりを共有する
・疲れた時の休息、中断、別の時間への変更を本人と支援者で相談する
・言語聴覚療法と地域の会話・社会参加支援の利用方法を案内する
・突然の言語変化や麻痺・反応の異常では、院内の援助要請又は在宅の119番を優先すると共有する
O-P/T-P/E-Pの背景と根拠
O-P:話す量だけでなく、理解・読み書きと伝わった内容を確かめる
失語症は脳の言語に関わる働きが損なわれ、言葉を使うことが難しくなる状態です。流暢に話していても相手の説明を理解しにくい場合があり、言葉が少なくても理解や考えが保たれる場合があります。話した量を、そのまま理解力や意思決定の力と置き換えず、理解・表出・読み書きの各面を確かめます[1,2]。
例えば「今日は何を飲みますか」という問いには返答しにくくても、本人に飲水が許可されていることを確認したうえで、使い慣れた二つの容器を示すと希望を伝えられる場合があります。これは言語機能が回復したと直ちに判断する結果ではなく、提示方法によって伝わりやすさが変わったという情報です。何を見せ、どの反応を得たかを具体的に残します。
はい・いいえの質問も、全員に確実な方法ではありません。頷きが続く場合は、本人が質問を理解できているか、疲労や習慣的な反応が影響していないかを確かめます。重要な希望は、時間を置く、実物や別の表現を用いる等、使える方法で内容を確認し、一回の返答だけで決定しません。
視聴覚、麻痺、注意、疲労、痛み等は、言葉のやり取りや道具の操作にも影響します。例えば文字盤を見つけられないことを、文字が読めないためと即断しません。言語聴覚士の評価と病棟での反応を共有し、急な悪化や新しい麻痺・意識変化があれば、いつもの失語症と考えず緊急評価へつなげます[3]。
T-P:伝える手段を増やし、実際のケアと選択につなげる
言語聴覚士は、言語や会話の障害を評価し、本人の目的に合う訓練と意思伝達の方法を考える専門職です。看護では評価結果を、排泄、痛み、清潔、予定の確認等へ取り入れます。言葉を取り戻すための訓練と、いま必要な用件を伝える支援の両方を保ち、言えるようになるまで必要な援助を待たせません[3]。
会話は、本人の注意が向いたことを確かめてから、短い内容を一つずつ伝えます。聞こえにくさがなければ、声を大きくすることが理解の助けになるとは限りません。例えば更衣を説明するときは衣服を見せ、最初の動作を示し、返答や動作を待ちます。速さと提示方法を変えた前後で、迷いや負担がどう変わったかをみます[2]。
補助代替コミュニケーションは、話し言葉を補う、又は別の手段で伝える方法です。絵、身振り、文字、機器等がありますが、書けば全員に伝わるわけではありません。痛い場所の図を使う場合も、指差しができる手、見やすい配置、示した意味を確認し、本人が使う場面で試します。機器を渡したことだけで支援完了としません[2,3]。
重要な説明は、分かりやすい情報と、本人が意思を示せる機会を用意します。発語困難を理由に、周囲だけで話を進めたり、家族の希望をそのまま本人の希望としたりしません。意思確認が難しい場合は、状態と支援方法を記録し、必要な同意の手続をチームで確認します。訓練や会話で疲労が増すときは休息し、回復の速さを一律に求めません[3]。
E-P:会話相手の工夫をそろえ、退院先でも本人への説明を続ける
失語症の看護計画では、本人だけへ「頑張って話す」ことを求めず、会話する側も方法を変えます。間違った単語を毎回言い直させるより、何を伝えようとしているかを確かめることが先です。本人が言葉を探している途中で答えを決めず、助けが必要かを確認します[1]。
例えば家族等との練習では、休みたいかを短く尋ね、本人が使える絵や身振りを示し、返答を待ってもらいます。うまくいった場合は、その言い方と道具の配置を残します。うまく伝わらない場合も、本人の努力不足とせず、質問の複雑さ、周囲の音、疲労等を見直します。家族等の焦りや負担も相談できるようにします。
退院時の予定表や服薬情報は、読む力に合わせて図・短い言葉等で提示し、誰がどの部分を手伝うかを確認します。地域の支援や会話の場を案内する際も、本人が関わりたい人や活動を尋ねます。話し言葉の正確さだけを社会参加の条件にせず、使える手段と専門職への継続相談を支えます[1,3]。
転棟・退院の申し送りでは、失語症という病名だけでなく、本人が使えた返答、確かめ方、呼び出し方法、疲労時の対応を伝えます。突然話せなくなる・理解しにくくなる等の変化は、再発等を含む緊急の問題として扱います。本人・支援者が、急変時の連絡と普段の会話相談を区別できる形にまとめます[2]。
評価・見直し
・同じ質問・提示条件で、本人が伝えた内容と必要な援助、疲労を比較する
・理解・表出・読み書きと補助具の反応を別々に記録し、使える手段を見直す
・苦痛や排泄等の用件が必要な時に伝わり、援助につながったか確認する
・重要な説明・選択に本人が参加できたか、意思確認の方法を評価する
・家族等・次の担当者が支援方法を再現できるか、実演と申し送りで確認する
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・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の看護計画|呼吸・嚥下と意思疎通の支援
・半側空間無視の看護計画|食事・移動の観察と安全な生活支援
言葉の理解・表出の支援とは分けて、半側空間無視の観察と生活援助を確認できます。
・脳出血の看護計画|意識の観察と急性期のケア
脳出血の急性期における神経症状と生活援助の全体像を確認したいときに参照してください。
参考資料
[1]米国国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)「Aphasia」(2024年12月発行・2025年4月16日更新)
失語症の理解・表出・読み書き、評価と言語療法、会話相手の支援
確認日:2026年10月17日
[2]American Speech-Language-Hearing Association 患者向け情報「Aphasia」(掲載年未記載)
言語機能と知能の区別、補助代替コミュニケーション、会話支援
確認日:2026年10月17日
[3]NICE「Stroke rehabilitation in adults(NG236)」(2023年公表)
1.4・1.12:情報提供、言語聴覚療法、意思決定への参加、会話環境・支援者の訓練
確認日:2026年10月17日
この記事はAIを用いて編集しています。

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