血液透析の看護計画は、治療で水分や老廃物を除く間の全身状態を捉え、血液を出し入れするアクセスを守りながら、透析と暮らしを両立できるよう支える計画です。体重や検査の値だけで評価せず、息苦しさ、疲労、通院や食事の困難も確認します。
ここでは成人の施設での維持血液透析を中心とした学習用の計画例を示します。透析導入直後、急性腎障害への一時的透析、腹膜透析、在宅血液透析の機器操作には別の条件があります。治療時間・除水・薬・食事と水分の目標、観察頻度、評価日は本人の状態と施設の手順に合わせます。
看護計画名:維持血液透析に伴う体液・循環とアクセスの変化を捉え、安全な治療と生活の継続を支える看護
以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。
看護目標
短期目標
・透析前から終了後に起きた息苦しさ・冷汗・吐き気・痛みなどを伝えることができる
・不調時に援助を呼び、状態に応じた評価と処置を受けることができる
・自分のアクセスの種類と、気になる変化を知らせる方法を確認できる
・治療後の疲れやふらつきに合わせ、必要な介助を受けて移動・帰宅できる
長期目標
・本人に合う食事・水分と服薬の方法を相談し、必要な支援を受けて継続できる
・アクセスの確認と保護を自分に可能な方法で行い、変化時に連絡できる
・通院と仕事・家庭生活の課題を共有し、必要な交通や福祉の支援を利用できる
・透析を受けにくい事情や体調変化を早めに相談し、治療継続の方法を検討できる
看護計画
O-P:観察・評価項目
・透析歴・処方、今回の治療時間・除水目標・目標体重と最近の変更
・前回終了時と今回開始前の体重、測定条件、透析間の飲食・尿量・体調変化
・透析前中後の血圧・脈拍・呼吸・SpO2・体温と普段の値からの変化
・浮腫・息苦しさ・起坐呼吸、口渇、末梢循環と意識
・透析中の冷汗・あくび・吐き気・筋痙攣・胸痛・呼吸苦と発症時刻
・アクセスの種類・部位、AVF/AVGの振動・音と普段との相違
・アクセスの発赤・熱感・疼痛・腫脹、皮膚の菲薄化・かさぶた、手指の冷感・しびれ
・透析カテーテルの固定・被覆材・出口部と接続部の状態
・針・回路の固定、穿刺部と周囲の出血、機器警報とその場の患者状態
・抜針後の止血状態と止血までの経過、皮下出血と帰宅後の再出血
・カリウム等の電解質・貧血・栄養と透析評価の検査、服薬と摂取の状況
・終了後の疲労・立ちくらみ・歩行、帰宅手段、生活の負担・不安と支援体制
T-P:ケア・実施項目
・普段の体重・循環・アクセスの状態と当日の指示、報告条件を透析チームで共有する
・体重と入出量は測定条件と不明点を明示し、目標体重や除水の見直しへ情報をつなぐ
・透析中の不調は直ちに担当者へ知らせ、循環・意識・呼吸を評価して施設の指示と急変手順に沿う
・除水・補液・酸素・薬の調整は指示と手順に従い、実施後の反応を再評価する
・強い胸痛・呼吸困難・意識低下・大量出血は応援を呼び、緊急対応を優先する
・穿刺針・回路と穿刺部を確認できるよう整え、警報だけに頼らず患者と接続状態を観察する
・手指衛生と方式に合う無菌操作を行い、アクセスの処置は訓練と施設手順に沿って実施する
・AVF/AVG側の血圧測定・採血や持続的な圧迫を避け、他の測定部位をチームで共有する
・アクセスの振動消失・手指の新たな冷感や痛み、感染を疑う変化は速やかに専門評価へつなぐ
・通常の抜針後止血は血流を妨げない手順で行い、止血遅延や再出血を報告する
・終了後の起立・移動は反応を見ながら介助し、帰宅の安全と必要な連絡を確認する
・栄養士・薬剤師・相談員と食事・薬・通院の困難を共有し、本人が続けられる支援を組み立てる
E-P:教育・生活支援
・透析が行う水分・老廃物の調整と、処方された時間を守る理由を分かる言葉で説明する
・冷汗・吐き気・筋痙攣や胸痛などは我慢せず、その場で援助を呼ぶ方法を練習する
・体重や飲水の目標は本人の尿量・心機能等で変わることと、記録・相談の方法を確認する
・食塩・カリウム・リン・タンパク質の扱いを検査と栄養状態に合わせ、保存期CKDの食事をそのまま続けないよう相談する
・降圧薬等の透析日の扱いは個別指示を確認し、自己判断の中断や追加をしない方法を共有する
・AVF/AVGでは教わった方法で振動と皮膚を確認し、振動消失・感染や手指の異常時は直ちに透析施設へ連絡する
・カテーテルでは被覆材を清潔・乾燥に保ち、自分で開放・接続・抜去をせず、濡れや外れは施設へ相談する
・アクセスからの大量または止まらない出血は小さな清潔なガーゼ等で出血点を圧迫し、119番へ連絡する
・強い呼吸困難・胸痛・意識低下は119番、発熱や悪寒など感染を疑う変化は速やかに医療機関へ連絡する
・欠席しそうな事情や災害・移動の問題は早めに相談し、連絡先と支援者を確認する
O-P/T-P/E-Pの背景と根拠
O-P:透析前後の体液と循環を普段からの変化として捉える
維持血液透析では、治療と次の治療の間にたまった水分や老廃物を調整します。ただし残っている尿量や食事、心臓の状態は人により異なります。例えば体重が増えていても、前回と衣服や測定時刻が違えば同じ条件では比べられません。体重の数値を本人の責任として扱わず、症状と測定条件を添えて評価につなぎます[1、3]。
目標体重であるドライウェイトは、余分な水分がない状態を目指す治療上の目安です。体の組織の増減や病状が変われば見直しが必要で、過去に決めた値が永久に正しいとは限りません。例えば食事量が落ちた人の体重が変わらなくても、水分がたまっている可能性を含め、呼吸や浮腫と栄養の変化を共有します[1]。
透析で水分を取り除く除水が、循環の補える速さを超えると血圧低下や筋痙攣につながることがあります。冷汗、吐き気、ふらつきは血圧の数字が出る前の手掛かりにもなります。例えば「いつもより気分が悪い」と言った時点で状態を確認し、定時測定まで待ちません。発症時刻と除水の経過を合わせて担当者へ伝えます[1、3]。
血液を出し入れするバスキュラーアクセスには、自分の血管をつなぐAVF、人工血管のAVG、カテーテルがあります。AVF/AVGの振動は血流を確認する手掛かりですが、カテーテルへ同じ観察を当てはめません。種類を最初に確かめ、振動や皮膚、被覆材など方式に合う情報を残すと、いつもの状態との違いを共有できます[1、2]。
発赤や熱感だけでなく、発熱や悪寒など全身の変化も確認します。また針が抜けたり回路が外れたりすると短時間に血液を失うおそれがあり、機器の警報だけでは十分ではありません。例えば穿刺部を見えないままにせず、出血や固定の変化を患者の反応と合わせます。大量出血や意識の悪化では観察の完了より緊急対応を優先します[1、4、5]。
T-P:処方と患者の反応を照合し、アクセスを保護する
血液透析の看護計画では、設定された除水量を達成したかだけで治療の安全を判断しません。例えば気分不良や血圧低下があれば、患者の状態を確認し、担当者へ直ちに知らせます。除水や補液の変更は施設の指示と手順に沿い、その後に症状と循環がどう変わったかまで評価します。自己判断で飲水させることを一律の対応にはしません[1、3]。
AVF/AVGでは血流を保ちながら皮膚と血管を守ります。アクセス側の血圧測定や採血を避けることを他部署にも共有し、測定場所の間違いを減らします。振動が消えた、手指が新たに冷たく痛むなどの変化は、次の透析日まで待たず専門評価へつなぎます。普段と違うことを患者が先に気づいた場合も、訴えを評価の材料にします[2、5]。
アクセスは血液に直接つながるため、処置時の手指衛生と無菌操作が重要です。カテーテルの接続部や出口部は方式に応じた消毒と被覆を行い、消毒薬や物品を自己流に追加しません。例えば被覆材の濡れを見つけたら、上から乾いた布を足して終えず、必要な交換と評価を手順に沿って実施します。使用物品への反応も確認します[2、4]。
通常の抜針後止血と、生命に関わる大量出血は対応を区別します。普段は血流を遮らない圧迫と止血確認を行いますが、大量・持続出血では直ちに応援を呼び、出血点へ直接圧迫して緊急対応へ進みます。自宅では119番へ連絡します。通常の出血に示された待機時間を、大量出血へ適用して救急要請を遅らせません[2、5]。
透析後は疲労や循環の変化が残るため、装置から離れた時点で援助を終えません。例えば座位では平気でも立つとふらつく人には、一人で歩かせず再評価し、帰宅手段を調整します。通院が負担なら送迎や社会資源を相談し、本人が大切にする仕事や家庭の役割も含めて治療を続ける方法を考えます[1]。
E-P:療養の目安を日常の行動に置き換える
水分の調整は、飲み物だけでなく汁物など食物に含まれる水分も関係します。しかし全員に同じ一日の飲水量や体重増加量を示す方法は適切ではありません。例えば本人の尿量と透析間隔に沿う目安を確認し、口渇がつらい場面や塩分の多い食事を一緒に振り返ります。守れなかった理由を聞き、栄養士と実行できる方法を探します[1、3]。
維持血液透析の食事は、保存期CKDの食事を単純に厳しくしたものではありません。透析による損失や食欲低下を踏まえた栄養の確保と、検査に応じた電解質・リン等の調整を両立します。例えば食べられない人へ禁止食品だけを増やさず、摂取量や好みを伝えて代替の食事を検討します。薬の飲み方も処方と照合して説明します[1]。
アクセスの自己確認は、手順を説明するだけでなく、本人がどこをどう確かめるか一緒に練習します。AVF/AVGでは振動と皮膚の変化、カテーテルでは被覆と固定を確認するなど内容を分けます。見えにくい、触れにくい場合は支援者の協力を選びます。異常があれば自分で器具を操作せず、いつ、どこへ連絡するかを確認します[2、4]。
緊急時の説明では、出血した場所と行動を結び付けます。例えばアクセスから血が多く出続けるときは、周囲へ助けを求め、小さな清潔なガーゼなどで出血点を圧迫しながら119番へ連絡します。救急隊には透析のアクセスからの出血と伝え、止まっても評価を受けます。大きなタオルを重ねるだけで出血点への圧迫が弱くならないよう練習します[5]。
治療を欠席・短縮する事情には、体調だけでなく仕事や移動、気持ちの負担もあります。自己判断で休むよう勧めず、通えないと分かった時点で施設へ相談する方法を整えます。血液透析の看護計画を見直す際も、数値が目標内かと同時に、本人が何に困り、どの支援が使えるかを確かめます。連絡先は休日や災害時を含め、使える形で残します[1、3]。
評価・見直し
・体重・呼吸・循環を測定条件と普段の状態から比較し、不調へ遅れなく対応したか
・除水や処置の実施後も症状と循環を再評価し、次回への情報を共有したか
・アクセスの種類に合う観察・清潔・保護と止血確認を行えたか
・透析後の移動・帰宅と生活の安全を確認したか
・本人または支援者が食事・水分・薬の個別目安と異常時の連絡方法を使えるか
・欠席しそうな事情や負担を相談でき、必要な支援と目標を見直したか
関連記事
・慢性腎臓病の看護計画|保存期CKDの観察と食事・服薬の支援
・転倒・転落リスクの看護計画|リスク評価と環境調整・移動支援
参考資料
[1]NIDDK:Hemodialysis(2018年1月レビュー)
血液透析の仕組み、アクセス、体液・栄養と治療中の不調、生活との調整
確認日:2026年10月19日
[2]National Kidney Foundation:Hemodialysis Access(掲載年不明(本文著作権表示2015年))
AVF/AVGとカテーテルを区別した保護・振動確認・清潔と通常の止血
確認日:2026年10月19日
[3]National Kidney Foundation:Ultrafiltration(掲載年不明)
血液透析の除水速度と血圧低下・筋痙攣、治療の欠席・短縮を避ける支援
確認日:2026年10月19日
[4]CDC:Best Practices for Bloodstream Infection Prevention in Dialysis Setting(2024年3月29日レビュー)
外来透析施設の手指衛生・カテーテル無菌操作・患者教育
確認日:2026年10月19日
[5]Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust:Using your arteriovenous fistula or graft(2023年9月レビュー)
アクセスの感染・閉塞・手指虚血を疑う変化と大量出血の緊急対応
確認日:2026年10月19日

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