術後悪心嘔吐の看護計画|苦痛・誤嚥の予防と回復支援

術後悪心嘔吐の看護計画は、麻酔や手術後の吐き気・嘔吐を早く捉え、誤嚥や水分不足を防ぎながら、飲食・活動と休息の回復を支える計画です。吐いていなくても、むかつきで飲めない・動けないという本人の苦痛を確認します。

ここでは成人の手術後を中心とする学習用の計画例を示します。小児や妊産婦、特殊な術式には別の条件があります。術後の嘔吐をすべて麻酔のせいにせず、呼吸・循環の異常や増える腹痛等は速やかに評価します。薬・輸液・飲食と離床、観察と評価日は術式・病状と個別指示に合わせます。

看護計画名:術後の吐き気・嘔吐と全身の変化を捉え、気道の安全と苦痛軽減・回復を支える看護

以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。

看護目標

短期目標

・吐き気を早めに伝え、苦痛に合う評価と処置を受けられる

・嘔吐時に必要な援助を呼び、気道と体の安全を保てる

・治療後の反応を確認してもらい、休息を取れる

・状態と指示に合う範囲で飲食・離床への支援を受けられる

長期目標

・症状に合う薬と飲食・活動の方法を相談しながら回復できる

・退院後に吐き気が続く場合の薬と連絡方法を本人・支援者が確認できる

・安全な帰宅と家庭での見守り・必要な援助を受けられる

・今回の経過を次の麻酔・手術時に医療者へ伝えられる

看護計画

O-P:観察・評価項目

・術式・麻酔方法と手術経過、過去の術後悪心嘔吐・乗り物酔い

・鎮痛薬・制吐薬等の種類、投与時刻・経路とすでに受けた予防

・吐き気の始まり・強さ・持続と本人の表現、空えずき・嘔吐回数

・吐物の量・性状と血液の混入、食事・薬・体位変換との関係

・意識・眠気、気道・呼吸数・SpO2、むせ・咳と嘔吐後の呼吸変化

・血圧・脈拍・体温、冷汗・顔色・起立時のふらつき

・痛みの場所と増え方、腹満、手術部の出血・排液等と全身の変化

・飲食と尿量・入出量、口渇、必要時の電解質等

・制吐・鎮痛実施後の苦痛と飲食・動作、眠気・循環等の副作用

・不安、におい・移動等の誘因、休息と環境

・内服できるか、術式に合う飲食・活動の許可内容

・帰宅手段・支援者、退院後の処方と症状の再評価・連絡方法

T-P:ケア・実施項目

・術前から既往の悪心嘔吐と心配を共有し、予防薬と鎮痛・補水の計画を照合する

・吐き気の段階で対応し、嘔吐するまで薬や援助を我慢させない

・意識低下・呼吸困難・循環悪化や大量の吐血は応援要請と緊急対応を優先する

・嘔吐時は手術の制約を確認し、安全な側臥位や顔を横にする援助等で気道を保ち、必要な吸引を準備する

・覚醒や嚥下が不十分な間は経口の飲食・薬を無理に与えない

・強い・増える腹痛、持続する嘔吐や新たな全身異常は原因の再評価を求める

・制吐薬は既投与・作用群・投与時刻と禁忌を確認して個別指示で実施し、反応と副作用を追う

・予防薬使用後も症状が出た場合は同じ薬を独自に重ねず、別の作用群等の治療を処方者へ相談する

・痛みと薬の副作用を合わせ、鎮痛を自己中断させず方法の調整へつなぐ

・輸液は循環と入出量・心腎機能を確認して指示に沿い、全員へ同じ量を追加しない

・静かな環境とにおいの調整、口腔ケア・吐物の片付けを行い、緩やかな体位変換を介助する

・症状・覚醒・術式の条件に合う飲食と活動を段階的に支え、帰宅後の対処と見守りを整える

E-P:教育・生活支援

・吐き気だけでも伝えてよいことと、過去の麻酔後の症状が予防計画に役立つことを説明する

・嘔吐時の援助の呼び方と安全な姿勢を確認し、意識がはっきりしない時に飲食をしないよう伝える

・許可された飲水・食事を少量から試し、気持ち悪さが増すときは中断して相談する

・急に起き上がらず、ふらつく時は一人で歩かず介助を頼む方法を確認する

・薬の目的・使う条件と上限は処方で確認し、吐いたからと自己判断で同量を飲み直さないよう説明する

・鎮痛薬を勝手に中断・追加せず、痛みと吐き気を合わせて相談すると伝える

・退院後も吐き続ける・水分や必要な薬が取れない、尿が減る場合は直ちに手術施設へ連絡する

・新たな強い腹痛・腹満、血の混じる嘔吐等は直ちに医療機関へ相談する

・強い呼吸困難・意識低下・失神、大量吐血などは119番を利用する

・術後の運転・飲酒等は退院指示に従い、帰宅の同行と見守り・休日夜間の連絡先を確認する

O-P/T-P/E-Pの背景と根拠

O-P:吐き気の訴えと全身の安全を合わせて評価する

術後悪心嘔吐は、麻酔薬や鎮痛薬、手術の刺激、血圧の変化等が関わって起こります。過去の術後悪心嘔吐や乗り物酔いも予防計画の手掛かりです。例えば以前の手術で強く吐いた人には、使った薬と経過を分かる範囲で聞きます。誰に起きてもおかしくないため、既往がない人の訴えも同じように確認します[1、2]。

悪心は吐きそうな不快感で、必ず嘔吐を伴うわけではありません。飲めない・動くのが怖いほどつらい場合もあります。例えば吐物が出ていない人でも、むかつきや空えずき、食事への抵抗を尋ねます。回数だけで軽症と決めず、本人の苦痛と飲食・活動への影響を記録すると、治療後の変化を確かめやすくなります[1、2]。

麻酔や薬の影響で反応が弱いときの嘔吐では、気道へ入る誤嚥を防ぐ援助が必要です。呼吸・意識と咳、嘔吐後の息苦しさを合わせて確認します。例えば吐いた直後にむせて呼吸が変わった場合は、口元を拭いて終わらず緊急評価へつなぎます。酸素の数字だけでなく、呼びかけへの反応と呼吸の深さも重要です[2、3]。

血圧が下がったときや強い痛みでも吐き気が起こるため、制吐薬の効果だけをみません。例えば起き上がると冷汗とむかつきが出る人には、動作と血圧・脈拍の経過を確認します。吐き続ける、腹痛が増える、出血や反応の変化がある場合は、麻酔後によくある症状と決めず、手術と病状に合う再評価を受けます[1、2]。

退院時に症状が軽くても、自宅や移動中に吐き気が出る場合があります。例えば内服や飲水が難しい人が、支援者なしで帰宅できるかを確認します。使える薬、連絡先と受診手段を事前に整えることも評価の一部です。薬の効果・眠気と移動時のふらつき、本人の不安を合わせて、帰宅後の援助を考えます[1〜3]。

T-P:早めに苦痛へ対応し、薬と飲食の条件を確認する

術後悪心嘔吐の看護計画では、吐いてから対応するのではなく、むかつきの段階で援助を始めます。例えば本人が「少し気持ち悪い」と話したら、呼吸循環と既に使った薬を確認し、指示された治療へつなぎます。静かな環境やにおいの調整も行いますが、それだけで治療を遅らせず、実施後に休めるかまで確認します[1、2]。

制吐薬は作用の仕組みが異なり、予防で使った薬と、症状が出た後の薬を分けて選びます。例えば予防を受けた後も吐き気が続く場合、同じ薬を看護師の判断で重ねません。薬の種類・時刻・経路を整理し、異なる作用群等の救済治療を処方者へ相談します。禁忌や併用薬、心電図等に関わる条件も薬ごとに確認します[1]。

制吐薬を使っても、その後の反応を見なければ効果と安全は分かりません。例えば吐き気は減っても眠気が強まり、立つとふらつく場合は離床を進めず評価します。薬ごとに必要な意識・呼吸・循環の監視を行います。補液も吐いた量だけで一律に足さず、血圧・尿・入出量と心腎機能を添えて処方の調整へつなぎます[1、2]。

鎮痛薬の一部は吐き気に関係しますが、痛みを放置することも回復の妨げになります。例えば「吐くから痛み止めはいらない」と話す人には、痛みと副作用の両方を聞き、鎮痛方法の調整を相談します。自分で中断・増減させず、必要な薬を組み合わせる計画に沿って援助します。吐き気と動作時の痛みを一緒に再評価します[1、2]。

飲食は、覚醒・嚥下と手術後の許可を確認し、無理のない量から支えます。例えば許可が出ても吐き気が強ければ無理に飲ませません。一方、全員の絶飲食を独自に長く延ばすこともしません。姿勢は術式の制約と気道の安全に合わせ、急な起き上がりを避けます。回復後は口腔ケアと必要な補水で不快感を軽減します[2、3]。

E-P:退院後の症状と安全な行動を具体化する

本人には、吐き気は我慢せず早めに知らせてよいと伝えます。例えば遠慮して薬を頼めない人には、呼び出し方法と、吐く前に相談できることを確認します。次の手術に備えて、今回の症状と効果があった治療を伝えられるようにします。「体質だから仕方がない」と諦める必要はなく、予防と治療を相談できると説明します[1、2]。

退院後の薬は、いつ使うかと飲めない時の行動を処方に沿って確かめます。例えば飲んだ直後に吐いても、吸収された量は分からないため同じ量を独自に飲み直しません。市販の酔い止め等を加えると成分や眠気が重なる場合もあります。使用した時刻と症状を伝え、追加・変更は医療者と相談する方法を確認します[1、3]。

飲食は手術ごとの指示を優先し、許可範囲で少量ずつ試します。例えば帰宅後も吐き続け、水分や必要な薬が取れない、尿が明らかに減るときは直ちに手術施設へ連絡します。無理に一気に飲ませる、翌日まで必ず待つといった対応は勧めません。新たに強い腹痛・腹満や血の混じる嘔吐等があるときもすぐ評価を求めます[1〜3]。

麻酔後や制吐・鎮痛薬の影響で、眠気や判断力・移動能力への影響が残る場合があります。例えば本人が大丈夫と感じても、運転して帰ることは避け、退院指示に合う同行者と見守りを整えます。ふらつくときは一人で歩かず援助を頼みます。強い呼吸困難や意識低下・失神、大量吐血では通常の電話相談より119番を優先します[3]。

術後悪心嘔吐の看護計画では、本人と支援者が困ったときに使える説明を残します。例えば夜間に症状が出ても、どこへ連絡するか分かるよう書面を一緒に確認します。帰宅後の飲食・薬と禁止されている行動を本人の言葉で確かめます。支援者がいない場合や連絡が難しい場合は、退院前に見守り・再診の方法を再検討します[1、3]。

評価・見直し

・悪心と嘔吐、呼吸・意識・循環を合わせて早期に苦痛を評価したか

・急変や通常と異なる経過を麻酔のせいと決めず再評価へつなげたか

・既投与を照合して治療を行い、症状・副作用と飲食/動作の反応を確認したか

・覚醒・術式の条件に合う飲食と離床、休息を支えたか

・退院後の薬・見守りと連絡/緊急要請を本人・支援者が確認できたか

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参考資料

[1]Ganほか:Fifth Consensus Guidelines for the Management of Postoperative Nausea and Vomiting—Appendix 1 Full Report(2026年9月誌面掲載の付属全文)
成人のリスク評価・多面的予防、薬の既投与と異なる作用群の救済治療、退院後対策
確認日:2026年10月20日

[2]Royal College of Anaesthetists:Risks and side effects—feeling sick and being sick(2024年11月・第6版)
麻酔・鎮痛・血圧と悪心、早期相談、飲食・動作に合う回復支援
確認日:2026年10月20日

[3]Royal College of Anaesthetists:Caring for someone recovering from a general anaesthetic or sedation(2025年3月・第3版)
退院後の判断/移動の安全、食事・薬の個別指示、同行と見守り・相談
確認日:2026年10月20日

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