急性腎障害の看護計画|尿量・体液の観察と回復期の支援

急性腎障害の看護計画は、短期間で低下した腎臓の働きを尿量・検査と全身状態から捉え、原因への治療を支えながら体液や電解質の変化に対応する計画です。尿を増やすことだけを目標にせず、呼吸・循環・意識を含めて悪化を見逃さないことを重視します。

ここでは成人の入院中から回復・退院後を想定した学習用の計画例を示します。原因、心不全や慢性腎臓病の有無、重症度、治療により内容を選びます。補液・飲水・食事・薬や腎代替療法(透析などで腎臓の働きを補う治療)は個別指示に従い、評価時期と報告条件を担当チームで定めます。

看護計画名:急性の腎機能低下に伴う体液・電解質の変化を捉え、原因治療と回復後の生活を支える看護

以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。

看護目標

短期目標

・尿の出方や息苦しさ、吐き気などの変化を、必要な支援を受けて伝えることができる

・状態に合う観察と治療を受け、急な悪化時に援助を受けることができる

・自分に指示された飲水・食事・薬の扱いを、支援者とともに確認できる

・疲労や不安を伝え、状態に合わせた休息と排泄の援助を受けることができる

長期目標

・回復に合わせて見直した水分・食事・活動の方法で生活できる

・本人または支援者が使用する薬と、体調不良時の相談方法を確認できる

・退院後の腎機能検査・受診の予定を確認し、必要な通院支援を利用できる

・尿量の減少や呼吸・意識の変化に気づいたとき、決めた連絡先へ援助を求めることができる

看護計画

O-P:観察・評価項目

・発症前の腎機能・尿量、AKI既往、慢性腎臓病・心不全・糖尿病等の併存疾患

・発症前後の発熱・感染、嘔吐・下痢、摂取低下、出血、手術と造影検査の経過

・処方薬・市販薬・サプリメント、使用時刻と最近の変更

・尿量を集計した時間と測定方法、排尿回数・色、排尿困難と下腹部の張り

・カテーテル使用時の尿流・屈曲・位置と閉塞を疑う変化

・血圧・脈拍・末梢循環、体温、呼吸数・SpO2・酸素条件、意識

・摂取・輸液・排出の実測量と記録漏れ、同条件での体重の推移

・浮腫・呼吸苦・口渇・粘膜と、体位や活動による変化

・クレアチニン・尿素窒素・電解質、必要な酸塩基・心電図・尿検査の推移

・吐き気・食欲・疲労・掻痒、睡眠と安全な移動の可否

・治療内容と実施後の反応、回復期の尿量増加と脱水を疑う変化

・本人の理解・不安、薬と飲水の管理方法、退院後の受診・支援体制

T-P:ケア・実施項目

・普段の値と経時変化、原因として確認中の事項、観察頻度と報告条件を共有する

・著しい尿量低下は測定・排尿経路を確認しつつ速やかに報告し、検査結果を待って放置しない

・急な呼吸困難・意識低下・循環不安定・重い不整脈を疑う変化は直ちに応援を呼び急変手順へつなぐ

・入出量と体重は測定条件を揃え、不明量を推測で実測値に混ぜず記録する

・補液・飲水制限・酸素等は個別指示に沿って行い、呼吸・循環・尿量の反応を再評価する

・薬剤師と投薬内容を照合し、腎機能低下時の投与量・休薬・再開の判断を医師へ確認する

・カテーテルの必要性と管理手順を確認し、無断の洗浄・挿入し直しを行わない

・感染や尿路閉塞等の原因に対する検査・治療を遅れなく受けられるよう調整する

・高カリウム血症等の検査異常は緊急度と指示を確認し、処置後の再検査と反応まで共有する

・腎代替療法が検討される場合は専門チームへつなぎ、説明と準備、本人の意思表出を支える

・口腔ケア・皮膚保護と排泄・休息を整え、栄養士と状態に合う食事を調整する

・回復期も観察を続け、退院時の薬・飲水・検査予定と地域への申し送りを整える

E-P:教育・生活支援

・腎臓の働きは尿量だけでは判断できず、採血や全身の観察が必要なことを説明する

・飲水を増やす・減らす判断を自己流にせず、今回の目安と変更時の相談先を確認する

・市販の鎮痛薬を含め使用薬を伝え、新たな薬やサプリメントは事前に相談するよう説明する

・嘔吐・下痢・発熱や食べられないときの連絡、薬の扱いを個別の指示で確認する

・尿が急に少ない・むくみが増える等は早めに医療機関へ連絡し、強い呼吸困難・意識低下では119番を利用する

・食事内容は検査・治療と栄養状態に合わせ、腎臓病だからと一律のタンパク質・カリウム制限をしない方法を相談する

・体重や飲水等の記録が必要な場合は、本人が続けられる方法を一緒に練習する

・回復したと感じても予定の採血・診察を受ける理由と、支援者・連絡先を確認する

O-P/T-P/E-Pの背景と根拠

O-P:尿量と検査を全身の変化に結び付ける

腎臓の働きが急に低下すると、不要物や水分、電解質の調整が難しくなります。原因は脱水や出血による血流低下だけでなく、感染、腎臓自体の障害、尿路の閉塞など多様です。例えば下痢の後の尿量低下でも「脱水だけ」と決めつけず、発熱や排尿困難、使った薬を一緒に確認します[1〜3]。

クレアチニンは腎臓から排泄される老廃物の一つで、普段より短期間に増えたかが重要です。採血の値が同じでも、その人の基準値と上昇速度で意味が変わります。例えば前回の検査票を確認できれば、もともとの腎機能低下と今回の変化を区別する材料になります。看護師が単独の数値から原因や透析の要否を決めるものではありません[1]。

尿量は量と時間を組み合わせて伝えます。「尿が少ない」だけでなく、いつから何時間でどれだけか、失禁や記録漏れはないかを確認します。カテーテルがある場合は屈曲なども確認しますが、管の問題と決めて報告を遅らせません。採血と尿量の経過が一致しないときも、それぞれを残して医師の評価へつなぎます[1、3]。

水分が不足する場合と、排出できずたまる場合では支援が変わります。口渇だけで飲水を勧めず、血圧、体重、浮腫、呼吸と入出量を合わせます。例えば尿が少ないうえ横になると息苦しい人では、水分過剰による肺への影響も考えて速やかに報告します。急な呼吸や意識の悪化は採血の結果を待たず対応します[1〜3]。

電解質や酸塩基の変化は、外見だけで重症度を判断できません。高カリウム血症などが分かった際は、症状の乏しさを安心材料にせず、緊急評価の必要性を確認します。回復して尿が増え始めても観察を終えず、摂取量との釣り合いと循環を見直します。評価の間隔は病状に合わせ、安定時の予定を悪化後もそのまま続けません[1、2]。

T-P:原因治療と体液調整の効果を確かめる

急性腎障害の看護計画では、尿量を増やす操作より原因への対応を優先します。脱水なら補液が検討されますが、体液過剰があれば同じ対応は負担になります。例えば補液中に呼吸苦や浮腫が増えた場合は、予定量が残っていても異常を直ちに共有し、指示を確認します。投与前後の変化を記録して次の判断に役立てます[1、3]。

薬は腎機能により量や間隔の調整が必要になることがあります。一方、普段の薬をすべて止める方法も適切ではありません。例えば持参した鎮痛薬や市販薬を含めて照合し、処方医と薬剤師に今回の腎機能を伝えます。休薬した薬は再開条件まで確認し、退院後も中断が続いたり、本人が元どおりに戻したりする行き違いを減らします[1、2]。

尿路がふさがる場合は、その解除が治療の中心になることがあります。排尿困難や下腹部の張り、カテーテルから急に尿が出なくなったことを、経過とともに伝えます。独自に管を洗浄すれば解決すると考えず、必要な検査や処置へつなぎます。感染を伴う閉塞が疑われる場合も、単なる排泄の困りごととして後回しにしません[1、3]。

利尿薬は状況により体液過剰の調整に使われますが、AKIそのものを治すため全員に投与する薬ではありません。また腎代替療法は、治療に反応しない電解質異常や肺水腫などを含め全身状態から検討されます。「クレアチニンがこの値なら透析」と説明せず、専門チームの判断と説明を支え、本人の疑問や希望を共有します[1]。

食事や生活の援助も、病期の変化に合わせます。吐き気で食べられない人に制限だけを増やすと、必要な栄養が取れなくなることがあります。例えば摂取量と検査を栄養士へ伝え、食べられる形や回数を相談します。排泄介助や休息の調整も合わせ、回復後に本人ができることが増えたら、援助量と目標を更新します[2、3]。

E-P:再発を防ぐ相談行動と回復後の確認を支える

尿量や疲れが改善しても、腎機能が十分に回復したとは限りません。退院後の採血と診察は、残る障害や新たな変化を確かめる機会です。例えば退院時に「次は何日に、どこで検査するか」を本人の予定表に記し、通院が難しい理由を聞きます。頻度は退院時の安定性などに応じて決まり、全員に同じ間隔を当てはめません[1、3]。

水分の説明は「たくさん飲む」「控える」の二択では不十分です。普段の尿量や心臓の状態、治療内容で適量が変わるため、その時点の目安と見直す条件を一緒に確認します。例えば暑い日の過ごし方や下痢が続くときの連絡を具体化し、本人が自己判断で大量の水を飲んだり、過度に制限したりしない相談経路を整えます[1〜3]。

薬の名前を覚えることだけを目標にせず、体調不良時に誰へ確認するかを練習します。例えば食べられず嘔吐する場合は、決めた医療機関へ連絡し、使用薬と症状を伝えます。一律の中止薬一覧を渡すのではなく、処方医が示した個別の手順を共有します。薬局で購入する鎮痛薬やサプリメントも確認対象に含めます[1、2]。

再受診の判断は本人に病名を診断してもらうことではありません。「昨日より尿が明らかに少ない」「むくみが増えた」など気づける変化と行動を結び付けます。自宅で強い呼吸困難や意識低下があれば119番へ連絡します。本人が説明しにくい場合は支援者と合図を決め、夜間や休日の連絡先も使える場所に置きます[2、3]。

急性腎障害の看護計画は、退院時の一度の説明で完結しません。本人の理解、疲れ、視力や生活環境に合わせ、短い確認表や支援者の協力を選びます。例えば「次に下痢が続いたらどうしますか」と尋ね、説明した内容が実際の行動につながるか確認します。できない点を責めず、記録や受診の方法を続けられる形へ変えます[1、3]。

評価・見直し

・尿量・採血・呼吸循環の変化を普段と比べ、異常時に速やかな評価へつなげたか

・入出量と体重の測定条件を揃え、補液や制限の効果と負担を再評価したか

・原因治療・薬の変更・再検査がつながり、回復期にも観察内容を更新したか

・本人の苦痛や摂取・移動の困難に応じ、生活援助と目標を見直したか

・本人または支援者が薬・飲水・体調不良時の連絡方法を確認できたか

・退院後の検査・診察と支援体制を実行できる形で調整したか

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参考資料

[1]NICE:Acute kidney injury: prevention, detection and management(NG148)(2019年公表、2024年10月16日更新)
成人AKIの検出、尿量と腎機能、原因・薬剤確認、腎代替療法と回復後の情報支援
確認日:2026年10月19日

[2]National Kidney Foundation:Acute Kidney Injury(AKI)(2024年2月26日更新)
症状が乏しい場合、原因とリスク、薬剤の確認、病状に合わせた回復期の支援
確認日:2026年10月19日

[3]NHS:Acute kidney injury(AKI)(2026年3月11日レビュー)
原因と症状、原因別治療、回復後の検査・慢性腎臓病の可能性
確認日:2026年10月19日

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