子宮摘出術後の看護計画は、手術後の出血や感染を早期に捉え、排尿・排便と活動の回復を支えながら、体の変化への思いと生活上の困り事に向き合う計画です。子宮を取ったことと卵巣を取ったことは区別して説明します。
ここでは成人の子宮摘出後の共通する回復過程を扱う学習用の計画例です。開腹・腹腔鏡・腟式、子宮頸部や卵巣の温存、がんに対する広汎な手術などで管理は異なります。広汎手術や他臓器の合併切除には追加の計画が必要です。抜管・飲食・運動、薬と評価日は個別指示に合わせます。
看護計画名:子宮摘出術後の全身・排泄の変化を捉え、苦痛を軽減して本人に合う生活の回復を支える看護
以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。
看護目標
短期目標
・痛み・吐き気・出血や排尿の困難を伝え、必要な評価を受けられる
・回復に合う援助を受け、安全に体を動かし休息できる
・術式と摘出範囲、自分に必要な観察や処置について確認できる
・心配や聞きたいことを希望する相手へ伝えられる
長期目標
・退院後の創部・出血・排泄の変化を確認し、異常時に相談できる
・体力と仕事内容に合う活動計画と家事の支援を利用できる
・体の変化や性生活、更年期症状を必要に応じて相談できる
・術後の診察と病理結果に応じた継続診療を受けられる
看護計画
O-P:観察・評価項目
・手術の目的・術式と摘出範囲、卵巣・子宮頸部の温存、合併切除と術中経過
・意識・呼吸数・SpO2・血圧・脈拍・体温、麻酔と鎮痛薬の影響
・腹部・創部・腟からの出血、ドレーン等の排液量・性状と累積量
・痛みの場所・増え方、腹満、悪心・嘔吐と鎮痛後の変化
・創部の発赤・腫脹・熱感・滲出、発熱や悪臭のある分泌物
・尿量・性状、カテーテルの開通、抜去後の尿意・排尿量・残尿評価の指示
・飲食の経過、排ガス・便通、腹部の張りと強くいきむ状況
・離床時のふらつき・疲労、下肢の感覚・運動、移動の援助量
・片脚の腫れ・熱感・痛み、胸痛・息苦しさ
・出血・腎機能等に関する検査と輸液・薬・血栓予防の内容
・ほてり・発汗・睡眠、身体像・妊孕性の変化に対する思い
・家事・仕事・介護の役割、支援者、性生活や受診に関する希望と理解
T-P:ケア・実施項目
・術式と摘出範囲、排尿管理や活動の個別指示をチームで共有する
・意識低下・強い呼吸困難・大量出血や循環悪化は応援要請と緊急対応を優先する
・新たに増える腹痛・腹満、出血・発熱・嘔吐は通常の術後痛と決めず速やかに報告する
・鎮痛・制吐を指示に沿って行い、動作時の効果と眠気・呼吸・便秘を再評価する
・安定した呼吸循環と麻酔の回復を確認し、体位変換・座位・歩行を介助する
・血栓・出血と麻酔の条件に合う圧迫器具や薬を管理し、皮膚と装着状況を確認する
・カテーテルの閉鎖・固定・流れを保ち、抜去後は個別指示に沿って排尿と必要な残尿を確認する
・飲食は術式と回復・合併症に合う指示で支え、便秘や嘔吐があれば摂取計画を相談する
・創部・腟の処置と被覆、ドレーンやパッキングの管理は指示と施設手順に沿う
・排便時に過度にいきまない環境・姿勢を整え、必要な便通調整を相談する
・本人の了解とプライバシーを守り、摘出や妊孕性・性に関する気持ちを聞く
・退院後の活動、就労、症状と連絡先を具体化し、必要なら専門外来や地域の支援へつなぐ
E-P:教育・生活支援
・術式・摘出範囲と回復の違いを本人の説明内容で確認する
・創部を清潔に保つ方法、被覆やシャワー・入浴の扱いを退院指示に沿って説明する
・腟出血の急な増加・血塊・悪臭、発熱や増悪する腹痛は直ちに手術施設へ連絡するよう伝える
・大量出血とふらつき・意識低下、突然の強い呼吸困難や胸痛では119番を利用する
・片脚の新たな腫れ・痛みは直ちに相談し、揉んだり運動で様子を見たりしないよう説明する
・尿が出にくい・排尿時に痛い・尿漏れ等は早めに伝え、尿が出ず苦しい場合は直ちに相談する
・無理のない歩行と休息、便通を整える食事・飲水や薬は本人の条件に合わせる
・重い物・仕事・運転、腟への挿入を伴う性行為などの再開は創の回復と個別指示を確認する
・月経・妊娠への影響と卵巣摘出による変化を分け、ホルモン治療は適応を相談して行うと説明する
・病理結果の診察と、子宮頸部の温存や過去の病変に応じた検診・経過観察の必要性を確認する
O-P/T-P/E-Pの背景と根拠
O-P:術式と摘出範囲を確かめて回復を評価する
子宮摘出には開腹・腹腔鏡・腟から行う方法などがあり、皮膚の傷と内部の処置は同じではありません。子宮頸部や卵巣を残すかでも、その後の説明が変わります。例えば小さな創だから負担も少ないと決めず、手術記録と指示を確認します。がんに対する広い切除や他臓器の処置があれば、追加の観察を共有します[1〜3]。
術後は少量の腟出血がみられる場合がありますが、増える出血や循環の悪化は区別します。腹腔内などの出血は、外に見える量だけで評価できません。例えば腹部が張り、脈拍が速くふらつく場合は、創部が乾いていても安心しません。腹部・排液・腟出血と呼吸循環の経過を合わせて速やかに報告します[1、2]。
尿道カテーテルの抜去後に尿が出たかは、移動できたかと別に確認します。尿量・尿意・痛み、指示された残尿評価を合わせます。例えば少し排尿しても下腹部の張りが残る人には「出たから問題ない」とせず、排尿状態を評価します。手術の範囲で回復や必要な処置が変わるため、抜去日を一律に決めません[1、2]。
麻酔や鎮痛薬の影響と手術後の腸の動きの低下で、吐き気・便秘・腹満が生じることがあります。一方、増える腹痛と発熱・嘔吐が重なる場合は、感染や臓器の損傷などの評価が必要です。例えば便が出ない人へ下剤だけを追加せず、痛みと腹部・飲食の経過を確認して、必要な診察につなぎます[1、2]。
子宮がなくなることに対する思いは人それぞれで、症状の改善を喜ぶ人も、喪失感や不安を抱く人もいます。卵巣摘出によるほてりなどが気持ちや睡眠に重なる場合もあります。例えば本人が話したくない時は聞き出さず、相談できる相手を知らせます。家族がいるから安心とせず、本人の希望と支援の実情を確認します[1〜3]。
T-P:排泄と安全な活動を支え、苦痛の変化を再評価する
子宮摘出術後の看護計画では、痛みの軽減を、呼吸や移動・休息が楽になることへつなげます。例えば起き上がる時に痛む人には、処方された鎮痛と体の支え方を調整します。痛みが急に強くなる場合は、通常の創痛として薬だけで対応しません。意識・呼吸や出血を含めて評価し、原因確認と治療の見直しにつなぎます[1、2]。
体を動かす援助は血栓や廃用の予防に役立ちますが、呼吸循環と麻酔からの回復を先に確認します。例えば立つと冷汗やめまいが出たら、歩く距離を伸ばすより状態を評価します。安定すれば短い活動と休息を重ね、移動前後の反応を見ます。圧迫器具や抗凝固薬も出血と手術の条件に沿って管理します[1、2]。
排尿の支援では、尿が通るカテーテルの流れを保ち、抜去後に排尿しやすい環境を整えます。例えば痛みでトイレへ行けない人には、移動と鎮痛の援助を調整します。出にくさを遠慮して隠す場合もあるため、静かな場で確認します。尿閉が疑われる場合は飲水だけを増やさず、個別指示で評価・処置へつなぎます[1、2]。
飲食と排便は、手術内容と回復に合わせて支えます。例えば便を出すために強くいきむ人には、姿勢や食事・飲水の条件を確認し、必要な便通調整を相談します。腸への処置や心腎機能によって条件が変わるため、全員へ大量の水分や食物繊維を勧めません。吐き気や腹満の悪化があれば、摂取計画を再評価します[1、2]。
傷の処置では清潔を保ち、使用中のパッキングやドレーンを本人が操作しないよう支えます。体の変化について話す際はプライバシーと本人の了解を守ります。例えば性生活の相談は家族同席で聞くと答えにくい場合があるため、希望する面談方法を確かめます。必要に応じて婦人科や心理面の専門支援につなぎます[1〜3]。
E-P:摘出した臓器と生活の変化を分けて説明する
子宮を摘出すると妊娠を継続することができなくなり、通常の月経はなくなります。一方、卵巣を残した場合まで、全員が直ちに手術による閉経になるわけではありません。例えばほてりを心配する人には、実際の摘出範囲と症状を確認して説明します。両側の卵巣摘出に伴う症状や治療は、年齢・病気の条件を踏まえて相談します[2、3]。
退院後は疲労が残ることがあるため、休息と無理のない活動を組み合わせます。例えば買い物袋や子どもを持ち上げる家事が必要なら、代わりの手助けを退院前から検討します。創が小さくても内部の回復には時間が必要です。重い物・仕事・運転の再開を固定日だけで決めず、動作と薬の影響、個別の説明を確認します[1、2]。
腟に挿入する性行為の再開は、内部の創が治っているか、出血や分泌物、痛みがないかを含めて相談します。例えば乾燥や痛みがあれば我慢して再開せず、使える対処を婦人科へ尋ねます。手術後も親密さの感じ方は一律ではないため、本人の望む範囲で話します。本人が望まない再開を回復の目標にはしません[1、2]。
出血が多くなる、悪臭のある分泌物、発熱や増える腹痛は直ちに手術施設へ連絡します。片脚の腫れと痛みは直ちに相談し、突然の強い呼吸困難・胸痛や、大量出血と失神などは119番を利用します。例えば受診先が休みの時も困らないよう、退院書類に夜間・休日の連絡方法を残します[1、2]。
子宮摘出術後の看護計画には、病理結果と今後の受診も含めます。子宮頸部を残した場合や過去の病変等によって検診・経過観察は異なるため、「子宮を取ったので婦人科の診察は不要」とは説明しません。例えば受診理由が分からない人には、何を確認する診察かを補い、日程と通院支援を整えます[1、3]。
評価・見直し
・手術の目的と摘出範囲に合う観察・排尿管理を共有できたか
・出血・感染や腹部症状の悪化、呼吸循環の異常を早期に評価へつなげたか
・苦痛を軽減し、活動と排泄・飲食の回復を支えたか
・身体の変化と心理・性生活の希望を尊重した支援ができたか
・退院後の生活調整、異常時連絡と継続診療を本人が確認できたか
関連記事
・手術部位感染のリスクに対する看護計画|創部の観察と退院後の相談
参考資料
[1]RCOG:Abdominal hysterectomy—recovering well(2025年6月27日レビュー)
開腹子宮摘出後の出血・排泄・活動・血栓、受診徴候と心身の回復
確認日:2026年10月19日
[2]NHS:Hysterectomy—Recovery(2022年10月11日レビュー)
術式による回復差、創部・腟出血・便通、生活と性生活の回復
確認日:2026年10月19日
[3]NHS:Hysterectomy—Considerations(2022年10月11日レビュー)
子宮頸部/卵巣の摘出の違い、手術による閉経と治療相談
確認日:2026年10月19日

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