帝王切開後の看護計画は、手術と麻酔からの回復に加えて、子宮が戻る過程や産後の出血を捉え、本人の希望に沿う授乳・育児を支える計画です。母親としての役割を急がせず、休息と援助を受けながら回復できるよう整えます。
ここでは成人の帝王切開後を対象とする学習用の計画例を示します。予定・緊急手術、麻酔方法、出血や高血圧などの合併症で必要な管理は変わります。観察頻度、離床・飲食、薬とカテーテル管理、評価日は施設の手順と個別指示に合わせます。
看護計画名:帝王切開後の全身・産褥の変化を捉え、苦痛を軽減して回復と育児への参加を支える看護
以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。
看護目標
短期目標
・痛み・吐き気・息苦しさ・出血の変化を伝え、必要な処置を受けられる
・痛みや麻酔からの回復に合う援助を受けて体位変換・離床ができる
・本人の希望と体調に合わせて児との接触や授乳への支援を受けられる
・出産の経過への疑問や気持ちを話せる相手を確認できる
長期目標
・創部と産後の変化を支援を受けて確認し、異常時に連絡できる
・薬の使い方と授乳中の注意点を確認して療養できる
・育児・家事の援助を利用し、休息を確保しながら活動を広げられる
・退院後の受診と本人・児の健康に関する相談を継続できる
看護計画
O-P:観察・評価項目
・手術理由・経過、麻酔と鎮痛法、出血・輸液・輸血、合併症と指示
・意識・眠気、気道と呼吸数・SpO2、脈拍・血圧・体温の推移
・創部と腟からの出血量・増え方、悪露の性状、子宮の状態と腹部の張り・痛み
・痛みの場所・性質と動作時の強さ、鎮痛後の効果・副作用
・麻酔後の下肢の感覚・運動回復、ふらつきと立位への反応
・尿量・尿の性状、カテーテルと抜去後の排尿、膀胱部の不快感
・創部の発赤・腫脹・熱感・滲出、発熱や悪臭を伴う悪露
・吐き気・嘔吐、飲食の状況、腹満・排ガス・便通
・片脚の腫れ・熱・痛み、突然の息苦しさ・胸痛
・授乳時の姿勢・疲労、児を抱く際の安全、母児の接触の希望
・乳房・乳頭の状態、児の哺乳状況と必要な専門支援
・睡眠、不安・出産体験への思い、家族・退院後の支援環境
T-P:ケア・実施項目
・麻酔と鎮痛薬の種類・危険因子に応じた呼吸・意識と循環の観察を継続する
・大量出血、意識低下、強い呼吸困難・胸痛では応援要請と緊急対応を優先する
・出血量と子宮・循環の状態を合わせて報告し、指示に沿う産後出血への処置を補助する
・強い腹痛は鎮痛薬の追加だけで扱わず、出血・感染・尿閉等の評価につなぐ
・処方された鎮痛・制吐を行い、動作や授乳がしやすくなったかと眠気・呼吸を再評価する
・下肢の感覚・運動と循環の回復を確認して、介助下で座位・立位・歩行へ進める
・血栓と出血・麻酔の条件を共有し、指示に沿う圧迫器具や抗凝固薬を管理する
・回復が良好で合併症がなければ指示に沿って飲食を支え、嘔吐や腹満があれば再評価する
・創部の被覆・清潔、カテーテル管理と抜去後排尿の確認を施設手順に沿って行う
・母児の状態が安定していれば希望に沿う接触を支え、眠気・疲労時は児の安全を確保する
・創部を圧迫しにくい授乳姿勢やクッションを一緒に試し、希望する栄養方法を支える
・緊急手術等の経験を否定せず聞き、休息と家族・心理面の支援につなぐ
E-P:教育・生活支援
・痛みや吐き気を我慢せず、授乳や動作の前にも相談できると伝える
・創部の清潔と被覆・入浴の方法は退院指示で確認し、自分で消毒薬等を追加しないよう説明する
・出血が急に多い、強い痛み、発熱・悪臭、創部の悪化は直ちに出産施設へ連絡するよう確認する
・突然の呼吸困難・胸痛・意識低下、大量出血と気分不良は119番へ連絡するよう説明する
・片脚の新たな腫れ・痛みは直ちに医療機関へ相談し、揉んで様子を見ないよう伝える
・処方薬の服用と授乳中の注意点を確認し、眠気や児の哺乳・呼吸の異常はすぐに相談する
・無理のない歩行と休息を組み合わせ、運転・重い物・運動や性生活の再開は個別に相談する
・児を抱く移動や階段・夜間の育児は、ふらつきと疲労に合わせて援助を頼む方法を確認する
・排尿困難・尿漏れ・便秘を我慢せず相談し、本人に合う対処を検討する
・家事・上の子の世話・通院の手助けと、不安や落ち込みの相談先を具体化する
O-P/T-P/E-Pの背景と根拠
O-P:手術の回復と産後の変化を区別して観察する
帝王切開後は、腹部の手術創だけでなく、出産した子宮と麻酔からの回復も観察します。麻酔方法や使った鎮痛薬により、呼吸・眠気の観察条件が異なります。例えば呼びかけへの反応が弱いときは「出産で疲れた」と決めず、呼吸数や酸素化を合わせて評価します。落ち着くまでの観察体制を確認します[1]。
産後に腟から出る血液や分泌物を悪露と呼びます。ある程度の悪露があっても、急に増える出血や循環の変化まで通常の経過として扱えません。例えば出血に冷汗やふらつきが重なれば、創部だけ見て終わらず、子宮や腹部の状態と血圧・脈拍を確認し、速やかな評価へつなぎます[1、2]。
痛みは創部や子宮の収縮に伴う場合がありますが、強い痛みの原因がすべて同じとは限りません。例えば急に腹痛が増えた人では、鎮痛効果だけでなく出血・感染・尿が出ていない状態などを考慮します。場所と経過を聞き、出血量や体温、排尿を添えて報告すると、必要な診察を受けやすくなります[1]。
手術や産後は血栓ができる危険の評価が必要です。動けない状態や出血・輸血などでも条件は変わります。例えば片脚だけ腫れて痛む場合は、むくみと決め付けて揉みません。突然の胸痛や息苦しさは肺に血栓が詰まる場合を含め緊急評価が必要です。日々の予防と症状出現後の対応を区別します[1〜3]。
児の世話ができているように見えても、痛みや眠気を我慢していることがあります。例えば抱っこ中にうとうとする人には、努力を求めるより、児を安全に預けて休む方法を整えます。授乳姿勢、睡眠、不安、支援者を合わせて確認し、母体の回復と本人が望む育児への参加を両立させます[1、2]。
T-P:苦痛を軽減して安全な活動と母児の接触を支える
帝王切開後の看護計画では、鎮痛の目的を「痛みの数字を下げる」だけにしません。例えば寝返りや深く息をする動作、授乳の姿勢が取れるかも確認します。処方に沿って薬を使い、枕などで楽な姿勢を調整します。眠気や呼吸への影響も評価し、効果不足や強い副作用があれば治療の見直しを相談します[1、2]。
早めに体を動かす支援は回復と血栓予防につながりますが、手術後の固定時刻だけで歩行を始めません。例えば下肢のしびれが残る、立つとふらつく、出血が多い場合は先に評価します。感覚と運動、循環が回復していれば介助下で段階を進め、歩行後の痛みと疲労を見て次の援助を調整します[1〜3]。
血栓予防の薬や圧迫器具は、産後の出血と麻酔の条件を含めて選ばれます。例えば硬膜外カテーテルが残る人では、その抜去と抗凝固薬の時刻を個別指示で照合します。予防薬を全員に同じ時刻で開始したり、歩けたから不要と判断したりしません。器具の装着部位と皮膚の状態も確認します[1、3]。
回復が良好で合併症がなければ、飲食を不必要に長く止める必要はありません。一方、強い吐き気や腹満があれば、無理に食べることを目標にせず再評価します。カテーテル抜去も麻酔と移動能力の回復などの条件で決めます。例えば抜去後に尿が出ず腹部が張る場合は、次の巡視まで放置せず報告します[1]。
母児の接触や授乳は希望と安全に合わせて支えます。例えば腹部に児の体重がかかる姿勢がつらければ、クッションや横から抱く姿勢を試します。麻酔や鎮痛薬の影響が残る間は、児の保持や移動を援助します。授乳を選ばない場合も含め、本人を責めず、休息と児の栄養を確保する方法を相談します[1、2]。
E-P:退院後の悪化を見逃さず、育児を分担する
創部の傷が小さく見えても、体の内部では回復が続いています。例えば家事をまとめて再開して痛みや疲労が強まる人には、活動を分けて援助を頼む方法を考えます。運転や運動、重い物、性生活の再開は一律の日数で許可せず、回復状態と退院指示を確認します。無理のない歩行と休息を組み合わせます[2]。
創部は教わった方法で清潔にし、赤み・腫れ・痛みの増加や膿に注意します。悪露の急な増加や強い腹痛、発熱も直ちに出産施設へ連絡する理由です。例えば少量ずつ続く出血でも気分が悪いなら、量だけで安心しません。大量出血と意識の変化や冷汗がある場合は119番を利用し、自分で運転しません[1、2]。
退院後も血栓への注意は続きます。片脚の新たな腫れや痛みは直ちに相談し、突然の強い呼吸困難や胸痛、失神では119番へ連絡します。予防の説明では、水分を多量に取れば必ず防げると伝えず、本人の飲水条件と活動、処方の継続を確認します。予防薬を使う場合は出血時の相談方法も共有します[2、3]。
授乳中の薬は、母体への効果と児への影響を確認して選びます。例えば強い鎮痛薬が処方されたら、本人の眠気だけでなく、児の飲みにくさや眠りが深すぎる様子も相談事項にします。呼吸異常は緊急に評価を受けます。市販薬を足すと成分が重なる場合があるため、追加前に処方者や薬剤師へ確認します[1、2]。
帝王切開後の看護計画には、育児の技術だけでなく出産体験への思いも含めます。例えば緊急手術を十分に振り返れなかった人には、本人が望む時に経過の説明を受ける機会を整えます。家族には母体にも休息が必要と共有し、家事や夜間の育児を分担します。不安や落ち込みが続くときの相談先を退院前に確認します[1]。
評価・見直し
・麻酔・鎮痛法に応じた呼吸と意識の観察を継続できたか
・出血・子宮・創部の状態と循環を合わせ、悪化を速やかに報告できたか
・疼痛や吐き気を軽減し、安全な離床・飲食と排尿の回復を支えたか
・本人の希望と体調に合う母児の接触・栄養方法を支えたか
・退院後の相談基準と育児・家事の支援が本人と支援者に共有できたか
関連記事
・手術部位感染のリスクに対する看護計画|創部の観察と退院後の相談
参考資料
[1]NICE NG192:Caesarean birth(2021年公開・2025年6月10日更新)
1.5–1.7の母児接触、麻酔・鎮痛後監視、飲食・排尿・創部と退院支援
確認日:2026年10月19日
[2]NHS:Caesarean section—Recovery(2023年1月4日レビュー)
創部・痛み・悪露、活動と育児、感染や血栓を疑う症状
確認日:2026年10月19日
[3]RCOG:Reducing the risk of venous thrombosis in pregnancy and after birth(2015年8月公開)
妊娠産後の血栓リスク再評価、活動と予防薬の個別化、肺塞栓の警告症状
確認日:2026年10月19日

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