急性膵炎の看護計画|全身状態・疼痛の観察と輸液・栄養の支援

急性膵炎の看護計画は、急に起こる膵臓の炎症に伴う腹痛だけでなく、呼吸・循環・腎機能など全身の変化を捉え、治療と栄養を支える計画です。痛みが少し軽くなったことだけで回復と判断せず、輸液や鎮痛後の反応も継続して確認します。

ここでは成人の急性膵炎を対象とした学習用の計画例を示します。慢性膵炎の長期的な消化吸収障害や膵切除後の管理とは区別します。輸液、飲食・経腸栄養、処置、活動は重症度と嘔吐・循環、併存疾患に応じて個別化し、全員に大量輸液や長期絶食を当てはめません。

看護計画名:炎症に伴う全身の悪化と疼痛を捉え、体液・栄養を整えながら回復と再発予防を支える看護

以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。

看護目標

短期目標

・呼吸・循環・意識の変化に応じて、遅れず必要な治療と援助を受けることができる

・痛みや吐き気の変化を、状態に合う方法で伝えて緩和を相談できる

・治療への反応を評価され、安全な方法で体液と必要な栄養の補給を受けることができる

・検査・処置と食事の方針について、自分に合う説明を受けて確認できる

長期目標

・全身状態に合う食事と活動を、必要な支援を受けながら進めることができる

・今回の原因と、追加治療・再診が必要な理由を確認できる

・禁酒・禁煙や食事等の困りごとを相談し、続けられる再発予防の方法を選ぶことができる

・強い腹痛や悪化徴候が再び現れたとき、予定受診を待たず医療へつながることができる

看護計画

O-P:観察・評価項目

・発症と経過、診断・原因の評価、重症度と管理場所・個別の治療目標

・腹痛の部位・広がり・強さ、体位や動作との関係、休息・呼吸への影響

・呼吸数・深さ・努力、SpO2と酸素条件、息苦しさの変化

・血圧・脈拍・末梢の冷感や冷汗、意識・呼びかけへの反応

・排尿・尿量と入出量、輸液の種類・速度・量、体重・浮腫と治療前後の変化

・吐き気・嘔吐、腹部膨満、食事・経腸栄養の実施と摂取後の症状

・指示された血算・尿素窒素・クレアチニン・電解質・血糖等の推移

・体温・悪寒、黄疸や腹部症状、画像・検査と感染・胆道病変等の評価

・鎮痛薬等の実施・効果と眠気・呼吸・血圧、アレルギーや既往疾患

・心・腎機能を含む併存疾患、使用薬、胆石や膵炎の既往、飲酒・喫煙と生活背景

・説明の理解・不安、食事や仕事・通院の課題、支援者と相談先

T-P:ケア・実施項目

・反応低下、強い呼吸困難、循環の悪化は直ちに応援と医師を呼び急変手順につなぐ

・全身状態を反復評価し、悪化時は観察頻度と管理場所の見直しにつなげる

・輸液は指示された種類・量・速度で実施し、循環・尿・呼吸等の反応を確認する

・輸液中の新たな息苦しさ・浮腫や乏尿等は直ちに報告し、独自の増量や固定量の継続を避ける

・鎮痛・制吐を処方に沿って実施し、痛みと呼吸・覚醒・循環を再評価する

・本人が楽な体位を循環・呼吸の反応をみて整え、無理な姿勢を強いない

・飲食制限の理由と再評価の予定を確認し、明確な理由のない一律の長期絶食を続けない

・経口・経腸栄養の開始と方法は病状・処置・個別指示を確認し、腹痛・嘔吐・膨満等を評価する

・食べられない場合も栄養評価を依頼し、経腸と静脈栄養の適応を医師・栄養士等と確認する

・胆道処置・感染への治療等は適応と方針を共有し、全例への予防的抗菌薬としない

・休息・口腔ケア・排泄や活動を、苦痛と病状に応じて援助する

・原因に応じた追加治療、禁酒・禁煙、食事と退院後の相談先を調整する

E-P:教育・生活支援

・腹痛だけでなく呼吸・尿・意識の変化も観察する理由を説明する

・痛み・吐き気・息苦しさ・ふらつき等は我慢せず、変化した時点で知らせるよう伝える

・点滴量や酸素、飲食・栄養は今回の指示を確認し、自分で増減や再開をしないよう共有する

・食事再開後の症状を伝え、食べられる量・内容を専門職と相談する方法を確認する

・飲酒していることだけで原因を決めず、検査結果と自分に必要な原因別治療を説明する

・禁酒・禁煙を続けにくい場面を聞き、本人が使える相談支援を紹介する

・再び突然の強い腹痛があれば直ちに受診相談し、背部へ広がる強い痛みや呼吸困難・失神・反応低下等では119番へ連絡する

・再診、処方薬、追加処置と自宅での食事・仕事の再開について、本人や支援者の言葉で確かめる

O-P/T-P/E-Pの背景と根拠

O-P:痛みと全身の変化を追い、輸液・鎮痛後も評価を続ける

膵臓は消化を助ける液や、血糖を調節するホルモンを作る臓器です。急に炎症が起こると、上腹部から背中へ広がる痛み、吐き気・嘔吐などが現れます。腹痛にはほかの病気もあるため、痛みの場所だけで診断しません。発症時刻、経過、診察や検査結果を共有し、今回の膵炎の原因と治療の方針につなげます[1、5]。

重症化の評価では腹部だけをみず、呼吸・循環・意識と腎機能などを合わせます。例えば痛み止めの後に痛みが減っても、呼吸が速い、尿が減る、反応が鈍いなら回復と決めません。直ちに状態を再評価して報告し、必要な管理場所と観察頻度を相談します。高齢や併存疾患、検査値の上昇なども含め、経過を繰り返し確認します[1、2]。

嘔吐や摂取不足、炎症に伴う体液の分布の変化で、循環を保つための補液が必要になります。しかし点滴を多くすればよいわけではありません。血圧・脈拍、尿、末梢の状態、尿素窒素や腎機能などの推移と、呼吸・浮腫もみます。例えば補液中に息苦しさが増えたら、尿が少ないことだけを理由に増量せず、医師へ直ちに共有します[1、3]。

腹痛と吐き気は、休息だけでなく食べることや動くことを難しくします。痛みの強さに加え、寝返りや呼吸をどの程度妨げるかを聞きます。鎮痛後は苦痛の変化とともに、眠気・呼吸・血圧も比べます。例えば静かになった人が「楽になった」のか、呼びかけへの反応が落ちたのかを確かめ、必要な治療の見直しにつなぎます[2、4]。

炎症と感染は同じではなく、発熱だけで膵臓の感染を確定しません。一方、症状や全身状態の悪化があれば、膵周囲の感染や胆道病変などの再評価が必要です。例えば新たな悪寒や黄疸を認めたら、出現時刻と腹痛・呼吸循環の変化を報告します。全例に同じ検査・抗菌薬を追加せず、診断と適応を確認します[1、2、4]。

T-P:体液と栄養を繰り返し調整し、苦痛を和らげながら回復を支える

急性膵炎の看護計画では、輸液を開始した後の反応が次の治療を選ぶ情報になります。量・速度は病状、失った量、心臓・腎臓の働き等に合わせるため、全員共通の大量投与を計画にしません。例えば循環が改善しない場合も、息苦しさや浮腫を含む再評価を依頼します。呼吸・循環が悪化しているときは記録を整えるより先に応援を呼びます[1、3]。

痛みを我慢させ続けず、処方された鎮痛と制吐を使い、効果と負担を確認します。楽になる姿勢は人によって異なります。例えば少し前かがみで苦痛が減る人には支えを用いますが、ふらつきや呼吸の悪化があればその姿勢を続けません。薬の追加や体位の固定を独自に決めず、本人が休めるかと全身の安全を合わせて評価します[2、4、5]。

「膵臓を休めるため」と、理由を見直さず長く絶食させることは避けます。軽症では、症状と食べられる状態に応じて早い経口摂取が検討されます。ただし強い嘔吐、処置の準備など明確な制限理由がある人へ無断で食事を出す意味ではありません。開始・中止の条件を確認し、少量での腹痛や嘔吐などの反応を医師・栄養士へ共有します[1、2]。

中等症から重症の人では、口から十分食べられなくても、チューブを通じて胃や腸へ栄養を入れる経腸栄養を検討します。静脈栄養は経腸が使えない、または必要量を確保できないなどの条件を踏まえて選びます。例えば嘔吐や膨満が増えた場合は、栄養経路・速度等を独自に変更せず評価を依頼します。栄養は単に点滴の水分量を増やすこととは区別します[1、2]。

原因に応じた治療を受ける支援も重要です。胆石による閉塞や胆管炎があれば内視鏡処置等が検討され、胆嚢の手術時期も膵炎の重さによって変わります。壊死などの合併症がある人も、全員が直ちに同じ手術を受けるわけではありません。本人の不安を聞き、何を評価して次の治療を決めるかを整理して、必要な専門診療へつなぎます[1、2、4]。

E-P:飲食の方針と再発への備えを、本人の原因と生活に合わせる

食事を控える期間がある人には、なぜ今は制限が必要か、次にいつ状態を確認するかを説明します。食事が再開できた人にも、膵炎が治ったと自己判断しないよう、量や内容と症状の報告方法を共有します。例えば食後の痛みや嘔吐が出たら我慢して完食せず知らせてもらい、食べられる方法へ調整します。極端な自己流の長期絶食にはしません[1、2]。

飲酒の習慣があっても、それだけで原因を決めません。胆石、薬、脂質などの評価結果を本人へ説明し、何の治療を続けるかを確認します。例えば胆石性膵炎では痛みが軽くなった後も、再発予防のための追加治療を相談する場合があります。検査や手術の予定を、腹痛が消えたから不要と独断で中止しないよう支えます[1、2、4]。

再発予防では禁酒・禁煙を支援します。飲酒を続けると急性膵炎を繰り返すことや慢性膵炎へ進む危険があるため、本人の生活に即して方法を考えます。例えば帰宅後に飲酒したくなる場面や職場の付き合いを聞き、相談支援と代わりの行動を選びます。できないことを責めるだけでなく、困った時点で再相談できる関係を整えます[4]。

退院後に突然の強い腹痛が現れたら、予約日まで待たず直ちに医療機関へ連絡します。背中へ広がる強い痛み、呼吸困難、失神・反応低下、著しく具合が悪い状態では119番へ連絡し、自分で運転しません。以前と同じ痛みでも、自宅で膵炎の程度を判断して鎮痛薬だけで様子をみ続けないことを、本人や支援者と確認します[5]。

回復後の食事、仕事や活動の再開は、栄養状態と残る症状、追加処置の予定に合わせます。例えば仕事中に食事が取れない人なら、続けられる時間帯や量を栄養士と相談します。説明した内容を本人の言葉で確かめ、通院・薬・症状相談の連絡先を一つのメモへまとめます。心理面や費用、支援者の負担も必要に応じて専門職へつなぎます[2、4]。

評価・見直し

・腹痛だけでなく呼吸・循環・意識・腎機能の変化を捉え、重症化の評価につなげられたか

・輸液後の改善と過剰の徴候を評価し、病状と併存疾患に合う指示を確認できたか

・鎮痛・制吐後の効果と呼吸・覚醒等を確認し、本人の休息と必要な動作を支えられたか

・絶食の理由を見直し、経口・経腸栄養等を個別の開始条件と反応に合わせて進められたか

・本人や支援者が原因別治療・再発予防と強い腹痛や急変時の行動を使える形で確認できたか

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参考資料

[1]ACG:Guideline Highlights—Acute Pancreatitis(Tennerら、2024年ガイドライン公式要約)(2024年)
重症化リスクと反復評価、輸液と検査、感染時の抗菌薬、軽症の経口・中等症/重症の経腸栄養、胆道処置等の条件
確認日:2026年10月19日

[2]NICE:Pancreatitis(NG104)Recommendations(2018年公表、2020年更新)
急性膵炎の原因、予防的抗菌薬を一律に使わないこと、絶食理由と経腸/静脈栄養、合併症・専門診療、情報支援
確認日:2026年10月19日

[3]NICE:Intravenous fluid therapy in adults in hospital(CG174)(2013年公表、2017年5月5日更新)
成人入院の体液再評価、入出量/腎機能/呼吸、過剰と不足、心腎障害等での専門的調整。膵炎専用の投与量指示ではない
確認日:2026年10月19日

[4]NIDDK:Treatment for Pancreatitis(2017年11月確認)
急性膵炎の治療・胆石等の原因別対応、鎮痛、感染時の抗菌薬、禁酒・禁煙支援
確認日:2026年10月19日

[5]NHS:Acute pancreatitis(2026年3月11日確認)
症状と体位、入院と悪化時の受診、急性/慢性の区別、原因と再発
確認日:2026年10月19日

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