乳がん術後の看護計画では、創部と排液、手術した側の腕・肩の動きやむくみを観察し、痛みを和らげながら生活動作の回復を支えます。乳房部分切除か全切除かだけでなく、わきのリンパ節の処置や乳房再建の有無によって、観察と援助の条件を分けることが大切です。
ここでは成人の乳房手術後から退院生活への移行を想定した学習用の計画例を示します。薬物療法中心の時期や進行がん全般の計画とは区別し、再建を伴う場合は形成外科の指示も確認します。目標の期限は患者の回復と退院予定に合わせて調整します。
看護計画名:乳房・腋窩手術後の創部合併症と上肢機能低下のリスク、および生活上の不安
以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。
看護目標
短期目標
・次のケア時までに、痛み・胸の張り・排液の変化などの苦痛を伝えることができる
・入院中に、必要な鎮痛と援助を受けて、許可された範囲の更衣・整容ができる
・退院前までに、自分の術式に合う腕・肩の運動を支援者と確認できる
・次の面談時に、創部や外見、生活について話したいこと・今は話したくないことを伝えられる
長期目標
・退院時までに、創部・排液の異常時の連絡方法を、自分に合う方法で確認できる
・退院後の再診時までに、指示された運動と皮膚の観察を無理なく継続できる
・生活再開に向け、家事・仕事・育児で必要な援助や動作の調整を相談できる
・自分のペースで外見や体の変化と向き合い、希望する相談や支援を利用できる
看護計画
O-P:観察・評価項目
・乳房手術の種類・左右、腋窩の生検と郭清の範囲、再建方法と採取部位
・出血量・麻酔・術後経過、創部保護・ドレーン・上肢運動の指示
・血圧・脈拍・呼吸・意識と、冷汗・顔色・めまい等の循環変化
・創部の出血・腫れ・左右差・発赤・熱感、痛みの部位と増悪の速さ
・ドレーン別の排液量・色・性状と時間変化、閉塞・屈曲・接続・固定の状態
・腕や手のむくみ・重だるさ・皮膚の変化、術前や反対側との違い
・肩・肘・手の動く範囲、しびれ、痛みと更衣・整容への影響
・再建部と組織採取部の状態、皮弁の観察項目・頻度の個別指示
・睡眠・食事・不安と、創部を見ることや説明を受けることへの希望
・利き手・家事・仕事・育児、退院後の支援者と通院・相談のしやすさ
T-P:ケア・実施項目
・急な胸部の腫れ・鮮血の増加・循環変化は直ちに術者へ報告し、院内手順で対応する
・鎮痛薬の指示・効果・副作用を確かめ、処置や動作練習の時刻を調整する
・創部とドレーンを手順に沿って管理し、移動時に引っ張られない位置へ固定する
・排液が急に止まり胸部が腫れる場合は、体外の屈曲等を確認して報告する
・乳腺外科・形成外科・リハビリ職と、許可される姿勢・運動範囲を共有する
・創の状態と痛みに合わせ、許可された運動を短い時間から援助する
・更衣・洗髪・起き上がりを試し、困難な部分の介助や道具を調整する
・上肢の新しいむくみ・発赤・熱感は評価へつなぎ、自己流の強いマッサージを行わない
・創部の観察や外見について説明する前に本人の希望を確かめ、プライバシーを確保する
・必要に応じて乳がん看護の担当者、リンパ浮腫外来、がん相談支援センターにつなぐ
E-P:教育・生活支援
・自分が受けた乳房・腋窩の処置と再建の有無を、図や説明書で一緒に確認する
・創部の急な腫れ、出血増加、発赤・熱感・発熱などの連絡すべき変化を説明する
・ドレーンをつけて退院する場合は機種に合う管理・記録を実演し、抜けても戻さず連絡する
・腕・肩の運動は個別の開始時期と範囲を守り、強い痛みや腫れがあれば相談する
・皮膚の清潔・保湿・保護と、腕の重さや袖口のきつさ等の変化を確認する方法を共有する
・採血・血圧測定は手術側を一律禁止とせず、すでにリンパ浮腫がある腕の採血は控えることを基本に、皮膚状態や治療上の必要を医療者と相談すると説明する
・下着・パッドは創の治りや再建の指示と本人の希望に合わせて選ぶ方法を案内する
・家事・荷物運搬・育児・仕事は段階的に再開し、必要な支援と再診予定を確認する
O-P/T-P/E-Pの背景と根拠
O-P:乳房・腋窩・再建を分け、創部と生活への影響をつなげてみる
乳房を切除する範囲と、わきのリンパ節を調べたり切除したりする範囲は同じ情報ではありません。再建には人工物を用いる方法と自分の組織を移す方法があり、さらに観察箇所が増えます。まず手術記録から何をどこまで行ったかを整理し、「乳がん術後」という一つの名称だけで同じ援助にしないことが計画の出発点です[1]。例えば同じ乳房全切除後でも、腋窩の処置と再建方法が違えば、動作の妨げや確認すべき創は変わります。申し送りでは乳房・腋窩・再建を別々に記載すると、運動や観察指示の取り違えを防ぎやすくなります。
手術部位の腫れは、創の痛みや排液の変化と合わせて見ます。例えば、直前より胸の張りが強まり、排液も急に鮮やかな赤色へ変わった場面では、定時の測定を待たず循環状態を確かめて報告します。排液の量だけで出血の有無は決められず、管が詰まれば創内に液がたまっていても容器の量が増えない可能性があります[3]。
リンパ液は組織の余分な水分を回収する仕組みの一つです。リンパ節の処置後にはこの流れが変わり、腕のむくみにつながる場合があります。手の見た目だけでなく、腕の重さ、袖や時計のきつさ、皮膚の変化を尋ねます。新しい発赤や熱感、発熱を伴う場合は、単なる術後のむくみと扱わず感染等の評価へつなげます[4]。
肩が動かないという訴えも、関節の硬さ、創の引きつれ、痛みや恐怖のどれが主な妨げかで援助が変わります。例えば、説明では腕を上げられても、上からかぶる衣服に着替えられないことがあります。できた角度だけを記録せず、どの動作でつらさが生じ、何を支えると行えたかを確認します[1,2]。
創部を見たくないという反応を、回復への意欲が低いと判断しません。外見の変化だけでなく、今後の治療、家庭での役割や仕事の心配が重なっている場合があります。本人が何を優先して知りたいかを尋ね、説明する量とタイミングを調整することも観察結果を計画へ反映する行為です[2]。
T-P:創を守りながら、許可された動きを生活へ戻す
痛みが強いままでは、着替えや体を起こす動作を避けやすくなります。処方された鎮痛薬の効果と眠気・吐き気等を確認し、動く前に苦痛を和らげられるよう予定を組みます。例えば洗髪がつらい場面では、腕を無理に上げさせるより、前かがみの許可や介助方法を確認して部分的に支援する方が、本人ができる動きを残せます[1,2]。
ドレーンは創内にたまる液を外へ出すための管です。体に接続されたままの構造、吸引の仕組み、容器の扱いは機種で異なるため、一つの手技を全機種へ適用しません。排液の時刻・量・性状をそろえて記録し、離床時には衣服や寝具への引っ掛かりを防ぎます。抜去や接続外れは元へ押し戻したり独断でつなぎ直したりせず連絡します[3]。容器に液が出ていることと機器が指示どおり働くことも分けて確認し、急な減少や痛みの増加は記録にとどめず担当者へ伝えます。
腕や肩を動かす目的は、生活で必要な動きを保つことです。一方で創や再建組織を守る条件があるため、開始時期・動かす範囲・負荷を術者と確認します。「翌日から全員同じ運動」や「腕をずっと使わない」という両極端を避け、許可された動作が翌日に痛みや腫れを増やさないかもみて調整します[1,2]。
再建がある場合は、乳房だけでなく組織を採った背中や腹部などの指示も確認します。例えば乳房手術だけの患者に行った起き上がりの介助が、腹部の創を持つ患者には負担になることがあります。皮弁の観察や姿勢の制限は再建方法に合う具体的な指示として申し送りし、不明なまま一般のリハビリ計画を始めません[1]。
むくみへの対応は、評価前から強くもんだり弾性着衣を選んだりすることではありません。リンパ浮腫の専門的な圧迫や用手的な治療は状態と指示に合わせて行います。新たな腫れの原因を確かめたうえで専門職へつなぎ、本人が取り組める皮膚の保護や許可された運動を支えます[4]。
E-P:禁止の暗記より、自分の変化と相談する方法を伝える
乳がん術後の看護計画を退院後へつなぐには、本人の生活で実際に起こりそうな場面を使って説明します。例えば家で子どもを抱く必要がある場合、単に「無理をしない」では判断できません。現在の運動・負荷の指示を確認し、当面の代替手段、手伝う人、次に再評価する機会まで一緒に考えます[1,2]。支援者がいるときも本人の希望を先に聞き、頼みたい動作と自分で続けたい動作を分けると、生活に合う計画を作りやすくなります。
皮膚の観察では、見える腫れだけでなく、重さや衣服の跡といった変化を本人が言葉にできるようにします。感染を防ぐ清潔・保湿・傷の予防を日常の動作へ組み込み、変化があればいつ・どこが・どのように変わったか伝える練習をします。症状が一時的に軽くなっても、新しいむくみは相談の対象です[4]。
採血や血圧測定を受けたことだけで必ずリンパ浮腫になると説明する根拠はありません。手術側の腕を永久に一律禁止にすると必要な医療を受けにくくなる場合があります。ただし、すでにリンパ浮腫がある腕の採血は控えることを基本とし、浮腫・感染・皮膚の状態と検査の必要性を医療者へ伝えて個別に相談します。予防のための一律禁止と、現在の浮腫への配慮を分けて共有します[4]。
下着やパッドの選び方は、外見を元へ戻すことを全員の目標にしません。創がこすれないことや再建の指示を優先し、本人が望むときに選択肢を示します。鏡で見る、家族に説明する、体験者の話を聞くといった行動にも本人のペースがあり、実施できないことを目標未達と決めつけません[2]。
退院時は、創の急な腫れや出血、発熱、腕の新しい変化に対する連絡先を、昼間と時間外に分けて確認します。ドレーンを留置して帰る場合には本人又は支援者の実演で管理方法を確認し、難しければ訪問支援等を調整します。説明書を渡したことより、困った場面で連絡と援助につながることを評価します[2,3]。
評価・見直し
・創部・排液・循環の変化が時間とともに記録され、異常時に速やかに報告できたか確認する
・鎮痛後の更衣・整容などの実行状況と、翌日の痛み・腫れを比較する
・乳房・腋窩・再建に応じた運動指示を、本人と各担当者が同じ内容で説明できるか確認する
・腕・手の変化と皮膚の状態を評価し、新規症状では原因評価と相談を優先して計画を見直す
・本人が望む説明・生活支援を受け、退院後の連絡先と管理方法を実演又は言葉で確認できるか評価する
関連記事
・末梢循環障害(浮腫)の看護計画|浮腫・皮膚の観察と生活支援
・疼痛の緩和・コントロールに向けた看護計画|痛みの評価とケア
・手術部位感染のリスクに対する看護計画|創部の観察と退院後の相談
参考資料
[1]国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」(2025年6月19日更新)
2.手術、6.リハビリテーション:乳房・腋窩・再建の区別と状態に応じた運動
確認日:2026年10月18日
[2]国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 療養」(2025年3月28日更新)
術後の腕・肩、下着とパッド、本人の不安・社会生活の相談
確認日:2026年10月18日
[3]Cambridge University Hospitals「Going home with a J-VAC wound drain after surgery」(2026年9月15日承認・第3版/2026年10月18日確認)
乳房手術後の排液記録、ドレーン合併症と退院管理
確認日:2026年10月18日
[4]国立がん研究センター がん情報サービス「リンパ浮腫」(2025年9月5日更新/2026年10月18日確認)
原因・早期発見・皮膚保護・運動・専門的治療、採血と血圧測定
確認日:2026年10月18日
この記事はAIを用いて編集しています。

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