上部消化管出血の看護計画|吐血・黒色便と循環の観察・止血前後の支援

上部消化管出血の看護計画は、食道・胃・十二指腸などからの出血を疑う変化を捉え、呼吸と循環を守り、原因に応じた止血と再出血の早期発見につなげる計画です。吐血が止まっていても、冷汗、ふらつき、反応の低下があれば、見える血の量だけで安全とは判断できません。

ここでは成人の急性上部消化管出血を中心とした学習用の計画例を示します。消化性潰瘍と、肝硬変などに伴う食道・胃静脈瘤の出血では治療が異なり、症状だけで原因を決めません。観察頻度、輸液・輸血、内視鏡、飲食や薬の扱いは、重症度と個別指示に合わせます。

看護計画名:出血に伴う呼吸・循環の悪化と再出血を捉え、止血治療と安全な生活の再開を支える看護

以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。

看護目標

短期目標

・呼吸・循環・意識の変化に応じて遅れず必要な治療と援助を受けることができる

・吐き気・出血やふらつきを、状態に合う方法で伝えることができる

・止血検査・治療と飲食・内服の扱いについて、必要な説明を受けて確認できる

・状態に合う介助を受け、排泄や体位変換を安全に行うことができる

長期目標

・止血後も再出血や全身状態の変化を評価され、回復に合う食事と活動を進めることができる

・出血の原因と自分に必要な治療・再診の予定を確認できる

・処方薬・市販薬の扱いを相談し、決められた服薬計画を支援を受けて続けることができる

・再び吐血や悪化徴候が現れたとき、予定受診を待たず助けを求めることができる

看護計画

O-P:観察・評価項目

・発症・最終出血の時刻、吐物・便の色と性状、推定量・回数と経時的変化

・気道の通り、吐物の残留、呼吸数・深さ・努力、SpO2と酸素条件

・血圧・脈拍の推移、皮膚の色・冷感・冷汗、意識・呼びかけへの反応

・尿量・排尿状況、口渇、入出量、輸液・輸血の実施内容と反応

・腹痛・吐き気、胸部症状、失神や移動時のふらつき

・血算・凝固・腎機能など指示検査の推移と採血時刻、輸液等との時間関係

・肝疾患・潰瘍・出血歴、心血管疾患、服薬・市販薬・飲酒と最終使用状況

・内視鏡等の所見、推定原因・止血方法・止血確認と再出血時の方針

・検査・鎮静の前後における覚醒・呼吸・循環、飲み込みと飲食の指示

・本人の不安・説明の理解、普段の生活、支援者・服薬管理と通院の手段

T-P:ケア・実施項目

・多量の持続出血、反応低下、呼吸・循環の悪化は直ちに応援と医師を呼び急変手順につなぐ

・急変時はそばを離れず、気道・呼吸・循環を評価し指示と訓練範囲で処置を補助する

・静脈路・採血・輸液・輸血等の準備を指示と施設手順に沿って進め、反応を繰り返し確認する

・飲食・内服の可否を直ちに確認し、出血・嘔吐・意識低下時に独自に飲食させない

・内視鏡等の緊急度を共有し、循環の安定化と並行して必要な説明・物品・搬送を整える

・薬の中止・継続・再開は処方目的と出血の状況を医師へ照会し、指示の食い違いを解消する

・止血方法と鎮静の実施内容を引き継ぎ、再出血と呼吸・覚醒の変化を観察する

・ふらつきや循環不安定がある間は排泄・移動を介助し、状態に合う休息を整える

・飲食・活動の再開は止血後の状態と指示を確認し、症状と循環の反応に合わせて進める

・退院前に原因別治療・薬・再診と緊急連絡の手順を本人と支援者へ引き継ぐ

E-P:教育・生活支援

・出血が止まって見えても検査と全身評価が必要な理由を、短い説明で共有する

・吐血・黒い便、冷汗、ふらつき、息苦しさ、反応の変化をすぐ知らせる方法を伝える

・移動やトイレは一人で無理をせず、必要時に援助を呼ぶよう説明する

・飲食・内服の制限と再開は今回の指示を確認し、自己判断で変更しないよう伝える

・抗凝固薬・抗血小板薬や市販の鎮痛薬を含む使用内容を伝え、中止・再開を必ず相談する

・退院後の吐血は直ちに医療機関へ相談し、多量・持続する出血や失神・反応低下・強い息苦しさ等では119番へ連絡する

・処方薬と原因別治療・再診の予定を、本人や支援者が使える一覧にまとめる

・自宅での症状の伝え方と夜間の連絡先、受診の交通手段を確認する

O-P/T-P/E-Pの背景と根拠

O-P:見える出血と全身の変化を組み合わせ、悪化を繰り返し確かめる

血を吐く、コーヒーかすのようなものを吐く、黒く粘りのある便が出ることは、上部消化管出血を疑うきっかけです。潰瘍、粘膜の傷、静脈瘤など原因は複数あり、色だけで場所や量を断定しません。例えば吐物を確認したら、時刻・回数・性状を記録し、腹痛や服薬歴も合わせて検査につなぎます[1、3]。

出血が多いと臓器へ血液を届けにくくなり、冷汗、皮膚の冷たさ、脈の増加、ふらつき、意識の変化が現れます。吐血の観察に気を取られず、まず呼びかけへの反応と呼吸を確認します。例えば会話が途切れ冷汗が増えたら、次の定時測定を待たず応援を呼び、測定値の推移とともに報告します[2、3]。

出血の程度は一つの値だけで決めず、血圧・脈拍・反応、出血の継続、血液検査、輸液後の変化を一緒にみます。検査結果を待つことが緊急対応の条件ではありません。例えば輸液開始後も循環が不安定なら、その反応を直ちに共有して管理場所や治療の再評価につなげます。観察頻度も症状と治療に応じて変えます[1、2]。

肝硬変などに伴う静脈瘤は、食道や胃の静脈が膨らんだ状態で、破れると出血します。ただし肝疾患がある人でも潰瘍など別の原因はあり得ます。病歴、内視鏡所見、止血方法を引き継ぎ、静脈瘤が疑われる場合の治療と潰瘍の治療を取り違えないようにします。看護師が便の色だけで診断名を確定することはしません[1、3]。

止血後も再出血を捉える観察が続きます。新たな吐血や便の変化に加え、落ち着いていた脈拍・血圧・反応が再び変わったかを比べます。内視鏡で鎮静を受けた場合は眠気を当然と扱わず、呼吸と覚醒も確認します。本人の訴えを聞けない時期ほど、検査前の状態と実施内容の申し送りが重要になります[1、2]。

T-P:循環の安定化を優先し、原因に合う止血と回復を支える

上部消化管出血の看護計画では、検査を先に済ませることより、生命を保つ呼吸・循環への対応が優先されます。循環不安定な重い出血では、蘇生後に緊急内視鏡を行うため、急変対応と検査準備を連携して進めます。例えば反応が落ちている人へ説明を続けたり、一人でトイレへ誘導したりせず、直ちに応援と医師を呼びます[1、2]。

輸液や輸血は、失った循環を補う一方で、必要以上の投与にも負担があります。出血量の見積もりや検査値だけで看護師が量・速度を決めず、指示された治療後の循環と呼吸を確認します。例えば投与中に息苦しさや反応の変化が出たときは、その時点の投与内容も含め直ちに報告し、施設の対応手順につなぎます[1、2]。

内視鏡では血管をクリップで閉じるなどの止血が行われますが、静脈瘤では結紮など別の方法が選ばれます。静脈瘤が疑われる出血では、感染予防の抗菌薬などが使われることもあり、全ての出血へ同じ薬を当てはめません。日本での適応・処方と施設手順を確認し、止血できない場合や再出血時の追加治療に備えます[1、4]。

急性期の飲食は、嘔吐や意識、検査・止血の予定を踏まえて可否を確認します。口渇が強くても自己判断で飲水を勧めず、許可範囲の口腔ケアなどで苦痛を和らげます。止血後も一律の絶食日数を設定せず、実際の処置と覚醒・飲み込み、再出血の状況を医師と確認して再開し、摂取後の変化をみます[1]。

回復に合わせて排泄や移動の介助を変えます。例えば安静時には落ち着いていても、起き上がるとふらつく場合は、そのまま歩かせず状態を再確認します。本人が自力で動きたい気持ちも聞き、安全な方法と援助を一緒に選びます。出血の治療と日常生活の支援を切り離さず、症状が再び現れたら計画を戻して評価します[2、3]。

E-P:再出血の行動と薬の扱いを、自分の生活で使える形にする

急な出血で不安が強い時期には、長い説明を一度に行いません。まず「今は飲食せず、つらさや血が出たことをすぐ知らせてください」など当面の行動を短く伝えます。落ち着いてから検査で分かった原因と治療を説明し、本人の言葉で確かめます。支援者との共有も本人の意向と理解の状態に合わせます[1]。

血を固まりにくくする薬は、出血と血栓の両方を考えて扱います。例えば心筋梗塞や脳梗塞の再発予防に使う薬を、便が黒かったからと長期間独断で中止すると、元の病気の治療に影響します。逆に自己判断の再開も避け、処方目的・薬名・最終服用を伝え、退院時に継続・再開の指示を一本化します[1、4]。

市販の痛み止めにも出血を起こしやすくするものがあります。薬の分類を覚えるだけではなく、例えば頭痛時に何を買っていたか、お薬手帳にない薬がないかを聞きます。別の医療機関や薬局を使うときも、今回の出血歴と薬の一覧を伝える方法を練習し、痛みを我慢するだけでなく安全な代替を相談できるよう支えます[3、4]。

帰宅後の吐血は、少量で止まっても次の予約まで放置せず、直ちに医療機関へ連絡します。多量・持続する出血、気が遠くなる、反応が鈍い、冷汗と強い具合の悪さ、息苦しさがある場合は119番へ連絡し、自分で運転しません。「何ミリリットル出たら救急」と量だけで区切らず、全身の変化も判断に含めます[3、5]。

退院後の計画は「気をつける」で終えず、処方薬、原因別の追加治療、再診日と夜間連絡先を整理します。例えば一人暮らしなら、急に具合が悪くなったとき誰へ連絡できるかを相談します。説明を覚えているかだけでなく、必要なとき実際に助けを求められるかを確かめ、読みやすい資料や支援者の協力を選びます[1、4、5]。

評価・見直し

・出血の性状と呼吸・循環・意識の推移を合わせて捉え、悪化時に遅れず対応できたか

・止血方法と再出血時の方針を共有し、治療・鎮静後の変化を見直せたか

・輸液・輸血後の反応を評価し、個別の治療目標と観察頻度を調整できたか

・飲食・移動を病状と指示に合わせ、苦痛とふらつき等を再評価できたか

・本人や支援者が薬の指示、再診と吐血・急変時の連絡方法を使える形で確認できたか

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参考資料

[1]NICE:Acute upper gastrointestinal bleeding in over 16s: management(CG141)(2012年公表、2016年8月25日更新)
成人に適用する初期蘇生・輸血の総合判断、内視鏡の時機、非静脈瘤/静脈瘤の区別、再出血、抗血小板薬、情報支援
確認日:2026年10月19日

[2]BSGほか:Multisociety consensus care bundle for the early clinical management of acute upper gastrointestinal bleeding(2020年)
疑い時の緊急観察、早期警戒スコアと反復評価、循環不安定時の治療・集中治療評価
確認日:2026年10月19日

[3]NIDDK:Symptoms & Causes of GI Bleeding(2024年7月確認)
急性出血・ショックの症状、上部消化管出血の原因、薬剤歴
確認日:2026年10月19日

[4]NIDDK:Treatment for GI Bleeding(2024年7月確認)
内視鏡/血管内/外科治療、原因別治療と市販薬を含む薬剤相談
確認日:2026年10月19日

[5]NHS:Vomiting blood(2025年8月18日確認)
吐血時の緊急受診と悪化徴候、自分で運転しないこと
確認日:2026年10月19日

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