ALS患者に対する身体機能低下と呼吸ケアを支える看護計画の実践ポイント

看護計画名:ALSに伴う身体機能低下および呼吸障害への対応

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、進行性に運動ニューロンが障害される神経難病であり、身体機能の低下、嚥下障害、呼吸不全など多岐にわたる看護支援が求められます。本記事では「ALSの看護計画」に焦点を当て、臨床現場ですぐに活用できる内容を詳しく解説します。看護実践者が直面する課題に応えるべく、観察・ケア・指導それぞれの視点から深掘りした情報をお届けします。

目標
短期目標
・呼吸状態の変化を早期に訴えることができる
・嚥下困難に応じた食事形態で安全に摂取できる
・筋力低下による日常生活動作の困難を伝えることができる
・コミュニケーション手段を活用し意思表出ができる

長期目標
・進行に応じた呼吸管理を受けながら安楽な生活を送ることができる
・自分の疾患や予後について理解し、意思決定に参加できる
・適切な補助具や支援を使いながらADLを維持できる
・家族と共に最期まで自分らしい生活が送れる

看護計画概要
O-P
・呼吸数・SpO₂の変化、起床時の頭痛、傾眠傾向、呼吸補助筋の使用有無などからCO₂貯留兆候を継続的に評価
・呼吸音(ラ音、無呼吸)と体位による呼吸困難の有無を確認し、NPPV開始の適応可否を判断
・咀嚼・嚥下機能の段階的変化(咳込み、誤嚥音、食事所要時間の延長、体重減少)をモニタリング
・四肢筋力低下の進行状況(MRCスケールなど)および構音・発声の明瞭度を定期的に記録
・文字盤、視線入力装置、スイッチなどのコミュニケーション手段の使用状況・理解度・有効性を評価

T-P
・呼吸困難やCO₂貯留兆候に応じて医師と連携し、早期にNPPV導入の検討・手配(在宅酸素管理の連携も含む)
・端座位や30度側臥位を基本とした呼吸補助的体位の確立と介助、必要に応じてリクライニングベッド調整
・誤嚥防止のため食事前後の姿勢調整、食事時間の確保、介助者の配置、食物形態(ソフト食〜ゼリー状)調整
・ADL低下に伴う入浴・更衣・排泄介助、スライディングボードや天井走行リフト等補助具の積極活用支援
・褥瘡予防のための体圧分散寝具や体位変換の頻度調整(最低2時間毎)

E-P
・在宅でのNPPV使用方法(マスク装着、トラブル時対応、フィルター交換)や緊急時の連絡体制を家族と共有
・とろみ剤使用、食事摂取量・体重モニタリング、食後体位保持(30分以上)の必要性と実施方法を指導
・患者の意思表出手段(視線入力・スイッチなど)の訓練と導入支援、STやリハ専門職との連携強化
・ACPの導入と意思決定支援(延命処置の有無、PEGやNPPV導入の希望)を継続的に確認し記録
・介護保険・特定医療費助成制度、訪問看護・訪問リハビリ、レスパイトケア制度など地域資源の紹介と申請支援

根拠
O-P(観察・評価)の背景と根拠
ALSは運動ニューロンの変性により、四肢の筋力低下や構音障害、嚥下困難、呼吸障害を段階的に進行させます。そのため、筋力や呼吸機能、嚥下状態、発話機能、ADLの変化を定期的に観察することが不可欠です。呼吸筋麻痺に伴う呼吸不全のリスクも高く、SpO₂や胸郭の動き、痰の性状などの微細な変化にも注意が必要です。また、進行とともに患者の意思表示が困難になるため、非言語的なサインの把握や表情・眼球運動の観察も重要です。

T-P(ケア・処置)の背景と根拠
ALSは治癒不能な進行性疾患であるため、症状の緩和とQOL(生活の質)の維持を目指した支援が中心になります。気道確保や呼吸介助には吸引や在宅NPPVなどが用いられ、進行期には気管切開や人工呼吸器管理も検討されます。また、体位変換や関節可動域訓練によって拘縮や褥瘡の予防を図り、食事摂取困難にはとろみ調整・嚥下訓練、PEG管理が必要となります。意思疎通困難が進行する場合には、文字盤・スイッチ式意思伝達装置の導入など多職種連携による支援が欠かせません。

E-P(教育・指導・生活支援)の背景と根拠
ALSは身体機能の低下に加え、患者自身が進行を自覚する精神的苦痛が大きく、心理社会的サポートと家族支援が中核となります。介護者に対しては、呼吸ケアや体位管理、食事介助の具体的な手技を含めた指導を行い、在宅療養を継続できる体制づくりを支援します。また、意思決定支援としてACP(アドバンス・ケア・プランニング)を早期に取り入れることが、本人の尊厳を保った最期を支える重要な要素となります。加えて、難病医療費助成制度などの社会資源についても具体的に情報提供する必要があります。

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