乳がん化学療法中の看護計画は、細胞障害性抗がん薬の投与中から帰宅後に起こる変化を捉え、必要な治療と副作用への支援をつなぐ計画です。治療を予定どおり受けることだけを目標にせず、苦痛を伝え、安全を確かめて生活を続けられるようにします。
成人の乳がんで細胞障害性抗がん薬を使う場合の学習用の例です。術前・術後・再発時等の目的、投与経路と薬の組合せに合わせて選びます。抗HER2薬や免疫チェックポイント阻害薬等を併用する場合は、薬に固有の観察を追加します。投与・休薬・支持療法と評価日は個別処方と施設手順に従います。
看護計画名:乳がんの化学療法に伴う感染・有害事象を早く捉え、治療と本人の生活を支える看護
以下は看護計画の例です。目標の期限や援助内容は、本人の状態・希望と治療方針に合わせて設定してください。
看護目標
短期目標
・投与中の痛み・違和感や体調変化を、その場で知らせることができる
・発熱・悪寒や摂取困難等の変化を伝え、速やかな評価と支援を受けることができる
・処方された薬と使う時期、不調時の連絡方法を支援を受けて確認できる
・吐き気・疲労やしびれに合う援助を使い、必要な生活動作を行うことができる
長期目標
・治療と検査の予定を確認し、症状を共有しながら安全に治療を継続できる
・本人に合う清潔・食事・休息と動作の工夫を生活へ取り入れることができる
・帰宅後の異常時に自己判断で我慢せず、確認した方法で医療相談できる
・外見・仕事・費用や妊孕性等の課題を共有し、必要な支援を利用できる
看護計画
O-P:観察・評価項目
・治療目的、薬剤名・組合せ・経路と周期、今回の投与・支持療法の指示
・前回からの副作用の時期・程度・回復、体調・体重と併存疾患
・血算と好中球・血小板、肝腎機能等の検査と薬別の必要な評価
・体温・悪寒、口腔・皮膚・呼吸・排尿・腹部等の感染を疑う徴候
・投与部位・ポート周囲の疼痛・灼熱感・腫れ・発赤、固定と注入の変化
・投与中の呼吸・循環・意識、発疹や顔・喉の違和感
・吐き気・嘔吐・口内炎・味覚、摂取・尿量と脱水を疑う変化
・下痢・便秘・腹痛、出血・皮下出血や強い倦怠感
・手足の感覚・痛み・筋力、歩行・調理・衣服操作と睡眠への影響
・皮膚・爪・脱毛、外見への思いと本人の希望
・支持療法薬と内服抗がん薬がある場合の使用・飲み忘れ・市販薬
・帰宅後の連絡手段・体温測定、家族等の援助、仕事と費用・妊孕性の相談事項
T-P:ケア・実施項目
・当日の処方・検査・前回の反応を照合し、不明点や投与条件の不一致は実施前に解消する
・投与中の全身異常は投与を中止して応援を呼び、施設の急変手順に沿って評価・対応する
・血管外漏出を疑う疼痛・腫れ等では直ちに投与を止め応援を求め、フラッシュせず薬別手順につなぐ
・漏出時はルートをまず保持し、吸引や抜去・温冷罨法等は訓練・薬剤別指示に従う
・発熱や感染を疑う変化は次回受診まで待たず共有し、指示された検査と治療を遅れなく支える
・制吐薬やその他支持療法は処方に沿って実施し、症状・摂取と副作用を再評価する
・皮膚と口腔を傷つけない清潔ケアを整え、感染リスクと本人に合う予防を支援する
・食事・水分は摂取と心腎機能等を見て調整し、食べられない・下痢等が続く場合は治療と栄養相談につなぐ
・しびれや筋力の変化を早めに共有し、転倒・熱傷と細かい動作への対策を専門職と調整する
・治療延期・量の変更等の説明を支え、本人の不安や希望をチームへ共有する
・薬・検査・帰宅後の体温と連絡基準を一枚等に整理し、外来と病棟・薬局をつなぐ
・生活・外見や将来の希望を聞き、がん相談支援センター等と妊孕性の専門相談へつなぐ
E-P:教育・生活支援
・自分の薬と治療目的、投与日と休薬日、起こり得る変化の時期を確認する
・点滴部の痛み・熱さ・腫れ、息苦しさや発疹等は我慢せず直ちに知らせるよう説明する
・発熱・悪寒等の連絡条件を治療前に確認し、解熱薬だけで様子を見たり連絡を翌日に延ばしたりしない
・強い呼吸困難・胸痛・意識低下等は119番へ連絡し、化学療法中と伝える
・手洗いと口腔・皮膚の清潔、食事の衛生は必要な範囲を確認し、全員へ過度な食品禁止や外出禁止をしない
・制吐薬等の予防薬・頓用薬を分け、効かない場合や飲めない場合は相談する方法を確認する
・しびれは具体的な動作の困難と一緒に早めに伝え、熱い湯・刃物・転倒等への対策を練習する
・内服抗がん薬の飲み忘れ・嘔吐時は自己追加せず、薬剤別の指示を確認する
・妊娠の可能性・避妊と妊孕性の希望、授乳や市販薬等は事前に担当者へ相談する
・夜間休日の窓口・受診手段と薬の一覧を準備し、本人の言葉で連絡手順を確認する
O-P/T-P/E-Pの背景と根拠
O-P:薬と時間経過に合わせ、検査と本人の症状をつなぐ
細胞障害性抗がん薬は増殖する細胞に働き、がん以外の正常細胞にも影響します。ただし全ての薬で同じ副作用が同じ日に起こるわけではありません。例えば前回の投与後に何日目から食事が取れず、いつ戻ったかを確認すると、今回の支持療法と生活の準備へつながります。使用する薬と治療目的を最初に照合し、他の人の経過をそのまま予測に使いません[1、5]。
感染から体を守る好中球が減少すると、感染が重くなりやすく早い対応が必要です。白血球や好中球の減少は自覚しにくいため、検査と症状を合わせます。例えば帰宅後に発熱と悪寒が出たら、次の採血で低下を確認するまで待ちません。あらかじめ決めた連絡条件を使い、強い倦怠感や新たな咳等も共有します[2]。
投与部の痛みや灼熱感、腫れは血管外漏出の手掛かりになります。ポート等から投与する場合も、胸や肩、首の違和感を見逃しません。例えばポンプが正常に動いていても局所が痛むなら、単に血管が細いからと注入を続けません。薬と投与量、いつからどこが変わったかを確認し、直ちに投与中止と専門対応へつなげます[4]。
しびれは感覚だけでなく、握る・歩くなどの動作と生活に影響します。例えばボタンを留めにくい、コップを落とす、つまずくという変化も確認します。以前からの糖尿病等も含め、全てを抗がん薬のせいと自己判断しません。新しい症状や程度を早く共有し、治療調整と安全な生活への支援につなげます[3]。
吐き気や口内炎、下痢、疲労は重なって起こり、本人の食事や家事、仕事を妨げることがあります。例えば吐いていなくても一日ほとんど飲めないなら、十分に対処できているとは言えません。症状と摂取、尿量や動作を合わせて評価します。脱毛などの外見への思いも人により異なるため、困る点を本人の言葉で聞きます[1、5]。
T-P:緊急対応と予防的な支持療法をつなげる
乳がん化学療法中の看護計画では、投与前に当日の処方と検査、前回の反応を確認します。例えば副作用が十分に回復していない人には、予定日だからと進めず情報を共有します。延期や減量は効果と安全を合わせて検討されるため、本人が治療の失敗と受け止めていないかも確認し、担当医の説明と質問を支えます[1、2]。
血管外漏出が疑われる場合は投与を止めて助けを求め、ルートを薬液で流し込むフラッシュは行いません。初期にはルートを保持し、残薬の吸引等を薬剤・デバイス別手順で進めます。例えば痛む場所を揉んだり一律に冷やしたりせず、薬を特定して必要な対応を確認します。抜去や温冷罨法、解毒薬等は訓練と指示に従います[4]。
吐き気や嘔吐を軽くする薬は、起きてから使う薬だけでなく予防として組み込まれる場合があります。例えば「まだ気持ち悪くないから不要」と思う人には、今回の薬の役割を確認します。使用後も症状と摂取を追い、眠気や便秘等の負担も共有します。飲めない・効かない場合に自己追加を続けず、別の方法を相談します[1]。
感染予防は手洗い、口腔・皮膚を清潔にし傷を作らないこと等を、本人のリスクに合わせて行います。例えば好中球が低い時期の生活を相談しても、全員へ生野菜や外出を一律禁止しません。食事の衛生や接触状況、検査を確認して必要な方法を選びます。発熱時は普段の予防だけでは足りないため、速やかな連絡と評価へ切り替えます[2]。
生活援助は治療を続けるために我慢を求めるものではありません。例えば足裏の感覚が鈍い人には、滑りにくい履物と移動の援助を、手の症状がある人には容器や調理の道具を検討します。無理な運動や独自の手足冷却を勧めず、専門職と方法を調整します。通院や家事の負担が変われば、支援者と相談する範囲も本人と見直します[3、5]。
E-P:帰宅後の異常と生活課題を相談できる方法へ変える
発熱の連絡条件は治療前に具体的に確認し、本人が使える場所へ残します。白血球減少がある・予想される人に発熱や悪寒等が出たら、検査値を自分で判断せず医療機関へ速やかに連絡します。例えば夜間でも翌朝まで我慢せず、薬剤名と最終投与日、体温と症状を伝えます。強い呼吸困難や意識低下では119番を使います[2、5]。
処方薬が多い場合は、抗がん薬、予防薬、必要時の薬を分けて確認します。例えば飲み忘れた内服抗がん薬を翌日にまとめないこと、嘔吐時に同じ量を追加するかは個別の指示を確認することを共有します。薬手帳と予定表を使い、本人が実際に準備できるか確かめます。市販薬やサプリメントも追加前に薬剤師等へ相談します[1、5]。
妊孕性とは将来子どもをもつ可能性に関わる力を指し、薬による影響は一時的な場合も永続する場合もあります。希望があればできるだけ治療前から専門相談へつなぎます。妊娠の可能性がある場合は速やかに伝え、避妊の方法や期間、授乳との関係は薬ごとの指示で確認します。月経の有無だけで安全と判断せず、自己判断で治療を中断しません[5]。
乳がん化学療法中の看護計画を見直すときは、本人の大切な生活も評価します。例えば仕事の調整、子どもの世話、外見や費用の不安を話せる窓口を紹介します。副作用を伝えると治療ができなくなると心配する人には、共有が安全な治療選択につながることを説明します。本人の言葉で連絡手順を確認し、分かりにくい点を直します[1、5]。
評価・見直し
・薬と投与時期に合う検査・観察を行い、投与時異常や感染の評価を遅らせていないか
・血管外漏出の疑いで投与を止め、薬別手順で対応したか
・苦痛の緩和が摂取・生活につながり、支持療法の負担も評価したか
・本人が薬と帰宅後の連絡条件を使える形で確認できたか
・生活・仕事・外見や妊孕性の希望を聞き必要な専門支援へつなげたか
関連記事
・感染予防・感染コントロールの看護計画|観察・感染対策と患者への説明
・栄養摂取量不足のリスクに対する看護計画|食欲・摂取量の評価と食事支援
参考資料
[1]国立がん研究センター がん情報サービス:乳がん 治療(2025年6月19日更新)
乳がん薬物療法の種類、細胞障害性薬の影響と支持療法
確認日:2026年10月20日
[2]国立がん研究センター がん情報サービス:感染しやすい・白血球減少(2023年8月10日更新)
好中球減少・感染、個別の予防と発熱時相談、治療調整
確認日:2026年10月20日
[3]国立がん研究センター がん情報サービス:しびれ(2025年9月17日更新)
末梢神経障害と生活動作、安全対策と早期相談
確認日:2026年10月20日
[4]eviQ:Extravasation management — Clinical procedure(ID4156)(2022年承認、2023年5月3日レビュー)
静注抗がん薬漏出の中止・応援、ルート保持と薬剤別処置
確認日:2026年10月20日
[5]NHS:Chemotherapy(2025年2月14日レビュー)
治療前確認と帰宅後の異常、生活支援と妊孕性・避妊の相談
確認日:2026年10月20日

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