看護計画名:パーキンソン病に伴う運動障害および転倒リスク
パーキンソン病の看護計画では、振戦や筋強剛、動作緩慢などの運動障害に加え、服薬管理、転倒予防、精神的サポートまで含めた多面的なケアが求められます。特に在宅や慢性期の場面では、患者の自立度維持とQOL向上を図る継続的支援が重要です。疾患の進行に伴い身体的・精神的負担が変化するため、評価とケアを繰り返し調整する柔軟な対応が不可欠です。
短期目標
・薬の効果や副作用を理解し、服薬管理ができる
・移動や動作の際に転倒を回避できる
・排泄や食事など基本的なADLを自力で行える
・体調や症状の変化を自ら看護師に伝えられる
長期目標
・日常生活の中で自立した活動が継続できる
・すくみ足や筋固縮による転倒を予防できる
・生活リズムを整え、便秘や誤嚥を防止できる
・社会参加や家族との関係性を前向きに保てる
O-P
・筋強剛、動作緩慢、姿勢反射障害の程度
・安静時振戦や歯車様固縮の有無
・歩行状態(小刻み歩行、すくみ足、前傾姿勢)
・服薬の効果持続時間(オン・オフ現象の有無)
・発語障害や嚥下障害の有無
・排泄パターン、便秘の訴えの有無
・表情の乏しさ、抑うつ傾向、認知機能の変化
・転倒歴の有無、生活内での危険場面の確認
T-P
・起居動作や歩行の見守り、転倒リスクへの即時対応
・動作開始時の声かけや合図によるすくみ足解除支援
・リズム刺激(メトロノーム、音楽)による歩行補助
・排泄時の動作誘導と便秘対策(腹部マッサージ、水分管理)
・食事時の姿勢調整、誤嚥予防のための咀嚼・嚥下確認
・服薬のタイミング管理(食前・食後など)とオン・オフ時間の把握
・入浴・更衣・整容の部分介助とADLの維持支援
・作業療法・理学療法士との連携によるリハビリ促進
E-P
・抗パーキンソン薬の作用・副作用と時間管理の重要性指導
・転倒しにくい環境整備(段差・敷物・手すり設置など)について家族へ助言
・排便リズムの記録、食物繊維摂取など便秘予防指導
・すくみ足や歩行障害に対する対処法の共有
・認知機能低下や幻覚が見られた際の対応方法を家族に説明
・精神的サポートの導入(ピア支援、カウンセリングなど)
・家族の介護負担軽減とレスパイト利用の提案
・訪問リハ・福祉サービスとの連携支援と導入調整
O-P(観察・評価)の背景と根拠
パーキンソン病は、黒質のドパミン神経細胞変性によって発症する進行性神経疾患であり、主な症状は振戦、筋強剛、無動、姿勢反射障害です。これらにより小刻み歩行やすくみ足、転倒、ADL低下を引き起こします。看護師は歩行状態だけでなく、「表情の乏しさ(仮面様顔貌)」「発語の低下(小声化)」「嚥下障害」「抑うつ」「認知機能の変化」など非運動症状も含めた全人的な観察が求められます。
特に服薬(L-ドパ製剤やドパミンアゴニストなど)に関連するオン・オフ現象やジスキネジア(不随意運動)は、服薬時間の調整や治療内容の再評価につながるため、日内変動を正確に記録・報告することが臨床判断に直結します。また、便秘や尿意消失など自律神経症状の評価も重要であり、患者の主観的訴えだけでなく、行動観察による変化の拾い上げが必要です。
T-P(ケア・処置)の背景と根拠
歩行障害に対しては、ただの見守りでは不十分であり、**動作の開始・継続・終結を支援する「声かけ」や「リズム刺激(聴覚・視覚刺激)」**がすくみ足の軽減に有効とされています。発作的な転倒を予防するには、手すりの設置・障害物の排除・照明の工夫など具体的な環境調整が必要です。
嚥下障害が進行すると誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、食事時の体位・とろみ調整・咀嚼力の評価・口腔ケアまで含めた支援が不可欠です。また、排泄ケアでは水分摂取・下剤使用の適正管理だけでなく、排便リズムの習慣化を促すアプローチも求められます。
服薬管理は疾患コントロールの軸であり、「食前か食後か」「オン時間のずれ」「副作用の発現」などを細かく調整しながら支援する必要があります。L-ドパは血中濃度が安定せず影響を受けやすいため、時間厳守と体調連動型の服薬支援がポイントです。
E-P(教育・指導・生活支援)の背景と根拠
教育支援は患者だけでなく家族や介護者にも広く提供されるべきであり、服薬の重要性、歩行時の介助法、食事姿勢の取り方、排泄誘導の方法などを具体的に指導することが必要です。特に幻覚・抑うつ・認知機能低下などの精神症状に対しては、本人の自覚が乏しいことも多いため、家族が初期変化に気づける環境を整えることが再発予防と生活安定につながります。
社会的孤立やフレイル進行を防ぐには、作業療法士やリハビリ専門職との協働により、活動の幅を維持しながら介護予防を進めることが大切です。また、介護者のバーンアウト予防の観点からも、地域包括支援センターや訪問系サービス、レスパイト入院の活用など、福祉資源と密接に連携した支援体制の構築が看護師の役割となります。
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