看護計画名:三尖弁閉鎖不全症に伴う右心負荷と症状管理
三尖弁閉鎖不全症は心臓の三尖弁の閉鎖不全により右心系に負荷がかかり、浮腫や肝腫大などの症状を引き起こします。看護師は心機能の継続的な評価と症状の早期発見に努め、適切な薬物療法の管理や生活指導を通じて合併症予防を図ります。本記事では三尖弁閉鎖不全症に対する看護計画と具体的ケア方法を詳しく解説します。
短期目標
・安静時および活動時の倦怠感や息切れが軽減し、循環動態が安定する
・浮腫や腹水が軽減し、体液バランスが正常範囲内に維持される
・患者および家族が悪化徴候(浮腫、倦怠感、腹部膨満)を認識し、早期に報告できる
・術前・術後の管理が適切に行われ、合併症が予防される
長期目標
・術後の循環動態が安定し、日常生活が安全に送れる
・自己管理が確立し、再入院が予防できる
・生活習慣の改善が行われ、心不全の進行が抑制される
・家族が異常の早期発見と迅速な対応ができる
O-P
・BP、HR、SpO₂のモニタリング
・心音の聴取(収縮期雑音、S3音の有無)
・腹部の観察(腹水、肝腫大の有無)
・浮腫の程度および分布の観察(下肢、仙骨部)
・倦怠感、めまい、失神の有無の確認
・排尿量および尿色の確認(腎機能評価)
・術後の創部の観察(出血、感染徴候)
・体重の測定と変動の観察
T-P
・酸素療法の実施およびSpO₂の維持
・利尿薬、抗凝固薬の投与および副作用の観察
・安静保持の指導(HOB 30°)
・食事管理(低塩・低脂肪食)
・排泄ケアの実施および便秘予防
・腹水貯留がある場合のドレナージ管理
・術前の準備指導(絶食、NPO)
・術後のリハビリテーションの実施(深呼吸訓練、歩行訓練)
・抗凝固療法の副作用(出血)の観察
・体液バランスの管理(電解質の確認)
E-P
・TRの悪化サイン(腹水、浮腫、倦怠感)の指導
・利尿薬、抗凝固薬の服薬指導および副作用の説明
・体重測定の重要性および記録方法の指導
・術後の生活指導(活動制限、受診計画)
・低塩・低脂肪食の具体例の提供
・腹部膨満感への対処法の指導
・家族への再発サインの観察ポイントの説明
・ストレス軽減のためのリラクゼーション法の指導
O-P(観察・評価項目)の背景と根拠
三尖弁閉鎖不全症は右心房と右心室の間にある三尖弁が完全に閉じないことで、右心不全症状が出現する疾患である。
頸静脈怒張、下肢浮腫、肝腫大、食欲不振、体重増加、尿量減少などの所見を継続的に観察することが、状態把握に直結する。
また、心音の異常(収縮期逆流性雑音)、呼吸困難感、SpO₂の低下などもあわせて確認する必要がある。
T-P(ケア・処置などの実施項目)の背景と根拠
心負荷を軽減するための安静保持や、必要に応じた酸素投与、利尿剤の適正使用による体液管理が重要である。
体重測定を定期的に行い、急激な増加がないかをモニタリングし、浮腫や胸水の進行を早期に察知する。
また、心不全症状の緩和を目的とした体位調整や栄養・水分バランスの調整も、実践的なケアの一環である。
E-P(教育・指導・生活支援)の背景と根拠
自己管理を支えるために、体重測定の継続や塩分制限の食事、服薬の重要性について患者と家族に指導する。
動悸や息切れ、体重の急増といった悪化兆候を早期に報告できるよう教育し、再入院予防に努める。
在宅療養の場合は、バイタルサインの記録方法や浮腫チェックのポイントも併せて伝える必要がある。
関連外部リンク
・日本循環器学会「心臓弁膜症」
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2019/02/JCS2019_kuramoto_h.pdf
・日本心臓財団「三尖弁閉鎖不全症」
https://www.jhf.or.jp/heartinfo/disease/valvular.html
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